見る・遊ぶ

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鮮烈美の饗宴「繚乱の華」
和紙アート かのうともみひさし
究極の躍動美 高野眞吾
名古屋でプロ・アマ異色合同展

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プロ・アマ異色の合同展「繚乱の華Ⅻ」が名古屋市東区大幸の市民ギャラリー矢田で2024年9月25日開幕し、29日まで開かれています。入場無料。

名古屋市内の山田、富田、南陽、志田味の4地区会館の趣味の会、この4館の指定管理者を務めるコスモコンサルタント社が推奨する作家たちが一堂に集う美術展です。同社を率いる内藤千賀弘さんが、多彩なゲスト作家を招きプロ・アマ異色の合同展としてプロデュース。第12回を数える今回は、フレッシュな顔ぶれも加わって、いっそう見応えのある展覧会になっています。

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創作和紙の新たな地平を拓く愛知県豊田市のユニット「かのうともみひさし」が初登場しました。日展、日本現代工芸美術展で入選多数を重ねた加納登茂美、加納恒夫妻の創作和紙ユニットです。和紙で作る着物・紙衣(かみこ)をモチーフにしたインスタレレーション「聖廟へ」は、フランス・ボルドーの中世ロマネスク様式を伝えるサン・レミ教会「日本文化・伝統と現在展」に出展した代表作の一つ。

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修道士および修道女がまとう修道服のイメージに和の紙衣を重ね、中世キリスト教会の荘厳な雰囲気と、民衆済度の清貧さを感じさせる和紙の温かみが入り混じり、聖なる気韻が漂います。

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自然素材を漉くという和紙の技法の根本に立ち返って、様々な素材を漉き重ねて、繊細かつ大胆な味わいのある新作が鮮烈です。多様なモノトーンの素材を漉き重ねて、幻視の世界を現出させた「幻視」と「イリュミナシオン」。

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粒が粗すぎず細かすぎず適度に粒揃いという希少な小原黒土や、暴れ河・天竜川の土砂がもたらした遠州浜の砂岩粒、木炭粉など様々な厳選した素材を、楮和紙とともに漉き重ねます。
 幽体離脱した魂の在りかのような、ほの明るい不思議な作品であったり。

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胞子をばらまいて繁殖する多彩な粘菌が作るミクロコスモスの世界のようであったり。

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紙漉きの技法に徹しつつ、和紙工芸の地平を拓く作家魂と向き合う。そんな作品群です。

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愛知県小牧市の彫刻家高野眞吾さんの緊張感みなぎる彫刻群が、会場の空気を引き締めます。

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今年夏のパリ五輪の感動も新た。高飛び込み、競泳、陸上110メートル障害、円盤投げなど、躍動する選手たちの一瞬の肉体美を凝固し、内に生動する強靭な精神までもそのまま造形した男性塑像たちです。

一方で、女性の瑞々しい美しさをたたえた女神像も。卓越した造形力で、肉体のみならず対象の本質、精神まで彫琢した彫刻は圧巻です。

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自然物の潜在的な美しさ、力強さを表現して人気の1992年岐阜県多治見市生まれの新進気鋭画家高津ゆいさんは一挙10点。

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人生の再起を図って介護職から水墨画家に転身した名古屋市の安保育子さんは、新境地の抽象的な墨画「気」など5点を出品しました。安保さんは「目に見えない気を心で感じとろうとした時、気が私という存在を包んでいることに気づきました。気が発するイメージを墨画に託しました。私にとって挑戦の作品です」と話しました。

山車・堂内木彫の第一人者で93歳の今も旺盛に彫刻活動に励む駒田正則さんも6点を出品してます。

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3つの展示室を内藤さんの空間演出により、百数十点の出品作を関連づけて構成。内藤さんの妻の華道家脇田智香さんの生け花作品も相乗して、芸術的な空間を構成しています。

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公共展示施設としては異例なことに、プロ作家たちも作品によっては、即売にも応じています。