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「尺八 人間国宝」野村峰山さん感涙
「流派を問わず一丸で」
芸どころ挙げ盛大に祝宴
家族愛、師弟愛にじむ

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 「芸どころ」といわれながら、これまで伝統芸能分野の人間国宝(重要無形文化財保持者)が一人も出ていなかった中京圏に、初めて人間国宝の認定者が出ました。名古屋市守山区在住の尺八演奏家・野村峰山さん(65)です。その栄誉を祝う記念祝賀会が2022年11月30日、名古屋市中村区の名古屋マリオットアソシアホテルの大宴会場で開かれました。米川敏子さん、菊原光治さんら邦楽界の著名人多数が来名、地元名古屋の芸能、文化人、大村秀章愛知県知事、河村たかし名古屋市長ら約330人が出席しました。
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 フルコース料理が供された丸テーブル48卓が広大な宴会場を埋め、祝辞、奉祝の演芸、演奏4組を挟む3時間に及ぶ祝宴でしたが、親子4代が芸道に励む邦楽一家・野村ファミリーの家族愛、峰山さんの謙虚な人柄、弟子たちとの師弟愛が随所に滲み出て、会場は温かな空気、大きな愛に包まれました。

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 幕開け、石井流大鼓の河村真之介さんが、鋭い鼓と掛け声であたりを払うと、峰山さんが後輩の尺八の名手、藤原道山さん(50)とともに客席後方二手に分かれて、登場。尺八古典の代表曲「鶴の巣籠(すごもり)」を掛け合い演奏し、心に染み入る深い音色が響きました。子を育てその子が巣立って別れるまでの親鶴の喜びや悲しみを表わすこの曲に、尺八人生の軌跡を表現をしたのでしょう。

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 峰山さんは三重県川越町に生まれ、尺八愛好家だった父親の手ほどきで10歳で演奏を始め、高校生のときに全国コンクールで金賞を受賞するなど早くから頭角を現しました。その後、本格的に演奏家の道に進み、古典的な邦楽の演奏技術を極めるとともに、クラシックやジャズの演奏家と共演するなど、幅広い分野で活躍を続けています。また、作曲家としても多くの作品を発表しているほか、尺八「峰山会」を主宰し、東京藝術大学、愛知県立芸術大学、名古屋芸術大学などで非常勤講師を務めるなど、後進の育成にも力を入れています。

 

 挨拶で、「今の私があるのは、恵まれた環境が、出会いあってのこと。そして家族に感謝します」と話しました。若き日に遭遇した都山流分裂に話が及ぶと、涙が込みあげ、2度声を詰まらせました。「師匠の鈴木鶯山先生に恩返しができた」と振り絞るように語ったのが印象的でした。もっと上達するため師匠が与した派から脱会して、上京して巨匠、山本邦山師に就いた際の葛藤は峰山さんにとって「とても辛かった」時期だったようです。経緯を知らない多くの客にとっては、何の感涙か伝わらなかったようでしたが、順風満帆、養子先の音楽環境にも恵まれた峰山さんの、知られざる一面がかい間見えた瞬間でした。「今後は流派を問わず一丸となって、尺八界にもっと光を当てたい」と抱負を述べました。
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 多くのメッセージが寄せられた祝辞では、京都市に本部がある都山流宗家4四代中尾都山さんがあいさつした後、「日本の室内楽」として伝統音楽を海外に紹介し峰山さんの音楽的な成長を押し立てたてきた徳丸吉彦・お茶の水女子大名誉教授が「今後も流派を超えた活動を期待しています」などとエールを送りました。

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 尺八は禅宗の一派である普化宗が尺八演奏を禅の修行とし、尺八を虚無僧に限定しました。しかし、普化宗が 1871(明治 4)年に明治政府によって解体され、楽器として門戸開放、三味線や箏との合奏も行われるようになりました。関西で新しい尺八音楽を構築したのが初代中尾都山(1876-1956)でした。 普化宗の尺八音楽、地歌・箏曲、そして西洋音楽から影響を受け。都山流尺八のレパートリーを作りました。中尾都山が西洋音楽の楽譜を参考にして作った新しい記譜法と、西洋楽器を含め合奏しやすい新しい楽器の作り方に影響をのもと、現在でも都山流奏者は、古典の伝承と現代作品の演奏に加えて、自らの創作曲をつくっています。古典から異ジャンル合奏、創作という都山流の流風と技術を高度に体現しているのが峰山さんです。

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 初代都山の尺八楽の軌跡をたどる壮大な演奏企画を東京・紀尾井小ホールで2018〜20年、全6回開催し、その成果は絶賛を浴びて、この度の人間国宝認定の大きなきっかけになりました。都山流尺八では島原帆山、山本邦山の巨匠2人に次いで3人目。現役唯一の尺八の人間国宝です。

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芸どころ名古屋にとっても、初の人間国宝誕生は大きな朗報です。

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 お祝いに駆けつけた名古屋の仲間たち「尾張万歳」、「民謡尾八会」、箏曲正絃社2代家元で妻の野村祐子さん門下の「正絃社合奏団」が祝福の芸や演奏を贈りました。

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 そして長男幹人さんが加わった尺八カルテット「都山流尺八峰山会〜竹の新撰組〜」が、峰山さん編曲版ヒットメドレーを超絶技巧を駆使して軽快に演奏し、花を添えました。

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 祝宴最後に、野村ファミリーのゴッドマザー、野村秀子さんが登場しました。なんと、当日朝につまづいて骨折した左腕を包帯で吊った、痛々しい姿での登壇となりました
 次女の箏曲家野村哲子さん(写真右端)が「峰山はおうちでは皿洗いをすることがありましたが、母いわく、人間国宝に皿洗いをさせるわけにはいかないわねえ、と」と笑わせ、思わぬハプニングについては「そんな母は今日を楽しみに、昨日は美容院に行きまして、今朝は病院に行きました」とユーモアを交えて話しました。峰山さんはこれを受けて「(皿洗いは)これはこれです。これからもしますよ」と答えて、会場は爆笑に包まれました。祐子さんは「当日朝、まさかの母のアクシデント。妹二人が母に付き添ってくれたので何とか祝賀会を滞りなくできました。本当にありがたいです」と話し、野村ファミリー一世一代の慶事を和やかに終えることができた喜びを語りました。

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