見る・遊ぶ

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憂愁しっとり花柳磐優さん
踊る博多人形・磐優愛さん
美優会「伝統文化で四季を愉しむ」

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 日本舞踊花柳流の花柳磐優(ばんゆう)さん主宰の「美優会」が、錦秋の名古屋城本丸御殿「孔雀之間」で、舞踊と箏が織りなすライブ「伝統文化で四季を愉しむ」を開きました。芸どころ名古屋期待の舞姫、娘の磐優愛(ばんゆめ)さんとの親子共演は、京都から招いた箏曲の名手大谷祥子さんの名演奏と相まって、桧香る御殿を華やかに彩りました。

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 プログラムは端唄舞「京の四季」を"接着剤"に、春夏秋冬にちなんだ踊り、箏曲からなる4章をつなぎ、再び巡る春を象徴する「八重桜」へ。まさに「伝統文化で四季を愉しむ」テーマそのものの構成です。

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 恋に殉じた悲劇の花魁二代目高尾太夫を歌ったとされる長唄「高尾懺悔〜もみじばの〜」では、磐優さんが憂いをたたえて、情緒たっぷりに踊りました。

 

 高尾懺悔を見るうち、拾穂園家蔵の掛け軸に、くだんの高尾太夫の短冊があったことを思い出しました。古今和歌集の秋の歌「ぬし知らぬ 香こそ匂へれ 秋の野に たが脱ぎかけし 藤ばかまぞも」です。秋野に咲いた秋の七草の一つ、藤袴の花を歌ったものと解されますが、藤袴に香気があると云うことをモチーフにして「秋の野で (香りを焚きしめた) 袴を脱ぎかけたのは誰だろう」「袴を途中まで脱いだ」ともとれる、なかなか意味深な歌です。絶世の花魁の流麗な筆先、なんとも言えぬ色香がたちのぼります。

 さて、若手の磐優愛さんは金城学院大学の学生時代、名古屋城本丸御殿の再建運動をリードした「春姫道中」の第21代春姫に選ばれたこともある花柳流の若手です。御殿再建運動に一役買った経歴にちなんで、愛らしいお姫様姿で登場。曲に合わせて振袖にまとう薄衣や小道具で変化をつけて、さまざまに踊り分けました。

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 長唄「菊づくし」は、花柳流の手習いはじめの曲。腰の入れ方やひねり方、三つ首の振り方、おすべりのしかた等、日本舞踊の基本所作を優美に決めて、踊る博多人形のよう。新曲「鈴払い  Ise -shima」では、長身、細身の肢体をダイナミックに回転させ、天地を清めるような舞。優美さの芯にある身体能力の高さを示しました。

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 大谷祥子さんは古典邦楽のみならず、さまざまなジャンルのアーティストと共演するなど、新進箏曲家として数々の賞を受賞している実力派です。沢井忠夫作曲・北原白秋詩「ゆれる秋」では、見事な弾き歌いを披露しました。彫琢された音色の深さ、卓越した技巧で、ライブを盛り上げました。

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 上演に先立って、着物姿の磐優さんと大谷さんの2人が、会場入り口でお客を出迎え。思わぬ歓待に驚かされました。
ライブのあった2022年11月20日は「えびす講」の日。福をかき寄せる熊手が会場の床の間にさりげなく飾られていて、小粋な演出でした。

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