見る・遊ぶ

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急きょ登板 志ら玉笑庵主
木曜会葉月釜
旧歴七夕の趣向

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 前々夜に急きょ席主交代。そんな綱渡りの月釜がコロナ禍第7波のまっただ中の2022年8月4日、名古屋・上飯田の料亭志ら玉を例会場とする月釜「木曜会」でありました。予定の席主ファミリーが感染症にかかったとして、志ら玉笑庵主の柴山利彌さんが急きょ登板しました。

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 慌ただしい交代劇でしたが、旧暦の七夕の趣向で、しかも濃茶道具の格式。破綻のない取り合わせは、茶懐石を専門とする料亭ならではの懐の深さでしょう。

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 寄付は、伊勢俳壇の三浦樗良筆の七夕織姫の俳画賛。復古大和絵派の渡辺清筆の菅原道真図。展観席は、江戸時代中期の大名茶人・酒井宗雅が描いた石菖図を掛けた前に、小ぶりで揃えた墨道具一式を飾り、そのほかは、香合、茶入、茶杓のみを並べた簡素な佇まい。いずれも優品であり、このうちとくに目を引いたのが、旗本茶人、一庵一尾伊織の共筒茶杓です。象牙の「芋の子茶杓」を竹で模造したもので、茶杓・竹花入造りの名人とされた一庵ならではの作です。

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 一尾伊織は三斎細川忠興の門流。尾張徳川家2代藩主徳川光友は茶を一尾伊織に就き、伊織とその弟で尾張藩重臣の玉置家の養子となった玉置雪江に茶書「一尾流秘書12冊」を撰述させております。
一尾流秘書は尾張家の蔵書を受け継いだ名古屋市蓬左文庫に所蔵されています。一説には、この秘書献上をめぐり一尾兄弟は仲違いしたとされます。

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 さて、本席に入ると、床の間には古雅な軸掛け棒にかかった古筆切、宗尊(むねたか)親王筆の和漢朗詠集。
古今集秋の部の冒頭「秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる」の歌が、典雅に書かれています。
旧暦七夕は暦の上では秋。酷暑の続く日々ではありますが、夜ともなれば秋の虫が鳴き、季節は進んでいます。
大ぶりな龍耳の古銅花入に、たっぷり滴を含んだ秋海棠が一輪。楚々として、初秋の風情を醸します。

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 点前座で一際存在感を放っていたのは、古染付芋頭の水指です。台座が付いていて安定感ある姿形も好ましく、真っ白な地の白に、濃淡ある青花文が描かれた様子は、一幅の山水画のようです。

すっきりした点前座に対して、脇床にはぐい呑みを見立てた瀬戸椿手の聞き香炉が飾ってありました。

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 次回木曜会は9月8日(木)、担当は表千家・柴田紹和さんです。当日券2,000円。


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