国際芸術祭あいちin尾西
ガチャマンの残照燃ゆ
丹下健三建築、塩田千春の朱糸
お茶目さん見どころレポート③
国内最大級の国際芸術祭「あいち2022」。WEB茶美会のレポーター「お茶目さん」は、毛織物産地・尾州として栄えた一宮市の尾西エリア(旧尾西市)に点在するサテライト会場を巡りました。
木曽川に接する尾西地区。戦後1950年代、ガチャンと織れば万の金が転がり込む「ガチャマン景気」に沸いた繊細産業の街です。ここで必見は、ノコギリ屋根の旧毛織物工場「のこぎり二」を会場とする塩田千春の作品です。芸術祭開幕を報じた複数の大手メディアが塩田作品を冒頭に掲げたことからも分かるように、注目度が最も高いアーティスです。赤の糸を空間全体に張り巡らせたダイナミックなインスタレーションは、彼女の代表的なシリーズ。工場に残る紡織機械や糸巻きの芯などを絡めて、尾西エリアの毛糸の物語と融合させたアートは鮮烈です。
ガチャマン華やかりし時代の残照ともいうべき、近代建築が尾西エリアにあります。「墨会館」です。国立代々木競技場・東京都庁等の設計を手がけた世界的な建築家である丹下健三が1956年に設計した愛知県内唯一の丹下作品です。ダブルビームの大梁、打放しコンクリートなど、丹下の初期作品の特徴が見られ、建物ファンならずとも必見の丹下ワールドです。
メインのホールには、彫刻のインスタレーションを作成するポルトガルの現代アーティスト、レオノール・アントゥネスのスタイリッシュな作品。迎英里子は毛織の生産工程をモチーフに紡いで織るという「物質の身体性」を展示します。
毛織老舗メーカー国島の元工場では、中国の新世代作家として近年大きな注目を集めている女性の映像作家・曹斐(ツァオ・フェイ)のSF調の映像作品が見られます。