見る・遊ぶ

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田舎家の内外 くつろぎの茶 小栗宏子さん八勝館青葉茶会
野趣と洒脱さと

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 表千家小栗宏子さんが2022年5月22日、名古屋・八事の名料亭「八勝館」で3年ぶりに開かれた東海茶道連盟青葉茶会で田舎家薄茶席の席主を務めました。

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 2020年(令和2年)に建造物9棟と庭が国の重要文化財に指定された八勝館は、日本を代表する名料亭として広く知られています。美しい庭に面した風情ある佇まいは、北大路魯山人が愛し、昭和初めにに移築された田舎家は魯山人のお気に入りで、彼の作陶にも使われました。

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起伏に富んだ広大な庭の中央に位置する田舎家までの景観が素晴らしく、それだけで既にご馳走です。
御幸の間棟がせりだして立つ池に流れ込む渓流のほとりに立つ、田舎家は、まさに益田鈍翁や森川如春庵が楽しんだ往時の「田舎家の茶」の気分を満喫できる数少ない遺構です。

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 表千家長生庵の門人である小栗さんは、師匠筋の長生庵歴代の軸、茶器を重用しつつ、要所要所に表千家不審庵ゆかり、流派を超えて楽しめる「鎌倉彫 波鯛」香合など寂び道具を織り交ぜて、室礼を組み立てゆきます。
 今回は、瓶掛け略盆点前により、田舎家のくつろぎの茶を演出しました。東南アジア由来の島物の割れ壺を転用した瓶掛けに、長谷川一望斎の光悦四方釜の南鐐写しを掛けて、野趣の中に洒脱さのある風情が、なんとも心にくいばかり。地元の名刹、甚目寺観音の古材を敷板にしたのも、田舎家には好適です。

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nこの日拝見した表千家の盆略点前は、盆に茶碗、茶器を入れて運び出しながらも、柄杓を扱い、茶器も盆から出して扱うなど、盆の中で茶器の扱いがほぼ完結することが多い他の流儀とはかなり異なりました。「茶席で生きているものは茶花」と言いますが、実際は最も生きているのはもてなしの所作、点前、そして亭主、スタッフの心でしょう。

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 小栗さんは田舎家席を担当するにあたって、苦労を買って出ました。「御幸の間の濃茶や菊の間の薄茶席は一回に35人程度はお入りになれる。田舎家は25人がせいぜい。毎回、待ち時間が長く、終了するのが一番遅くなっていましたので、室内だけでなく、庭に立礼席を設けて、急ぐ方には立礼席でお茶を召し上がっていただくようにしました」

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 立礼席も点て出しではなく、きっちり炭で湯を沸かした釜を仕組んだ立礼棚で点前をしながら、野点傘、扇面の軸、花を飾ってのおもてなし。
 「たいへんでしたけれど、楽しかったです」と小栗さん。

 庭の立礼席は同門のお茶人さんたちが加勢。その仲間同士の助け合い姿が、新緑以上に麗しく、眩しく感じられました。