見る・遊ぶ

見る・遊ぶ

東海茶道連盟が青葉茶会
下村宗隆さん格調の初風炉
重文「八勝館」御幸の間

IMG_6176.JPG

 茶どころ名古屋の有力宗匠方でつくる東海茶道連盟が初夏恒例の青葉茶会を2022年5月22日、名古屋・八事の名料亭「八勝館」で3年ぶりに開きました。コロナ禍で中断されていましたが、昨年11月の秋季茶会に続いて青葉茶会も無事開催されました。通算127回を数える大茶会です。
 IMG_6149.JPG

 建築群が国の重要文化財指定されている八勝館は、全国に名をとどろかす名古屋きっての茶会場です。メインの濃茶は、尾州久田流家元の下村宗隆さんが務めました。

IMG_6164.JPG

 八勝館での濃茶は、待合、菓子席、さらに園庭を渡って御幸の間棟の「残月之間」の3室の荘り付けを鑑賞して、本席の御幸の間に席入りするのが通例です。濃茶の動線上には、意匠が異なる4つの数寄屋、茶室があり、計6か所の大小の床の間を備えております。時候、テーマに沿った掛け軸が最低6本、茶花は2か所に要る、という高いハードルが、席主に課せられます。

IMG_6150.JPG
 つまり、東海茶道連盟に名を連ねる宗匠は、この要求難度の高い濃茶を担当する力量、茶器集積、社中を有する実力者でないと務まらない、ということになります。

IMG_6158.JPG
 下村さんは、青葉の季節にふさわしい風物、涼感をテーマに、待合に鵜が水魚を狙う瞬間を捉えた松田杏亭筆の日本画を掛け、鵜飼、鵜舟を連想させる鱗形の炭斗、櫂形の火箸など炭道具を飾って、次の菓子席には今年3月末に91歳で逝去した尾州久田流5代の下村瑞晃宗匠の遺影に供茶・供菓をするなど、起伏に富んだ趣向で客の心をとらえます。

IMG_6160.JPG

 

IMG_6168.JPG

 庭を踏み石伝いに渡った御幸の間棟の「残月之間」では、青磁算木手透の花入に、清楚な笹ゆりを一輪投げ入れて、床の間の寂蓮筆の和歌断簡「青木切」の掛け軸と調和させます。

IMG_6166.JPG

 

IMG_6178.JPG

 本席の床は、無学和尚の「青山云々」の横もの。大山蓮華を投げ入れた古銅象耳花入は金味とろっと、品格があり、床映りよく、力があります。

IMG_6180.JPG

 ご馳走は、3代宗全造の土風炉の格調。初風炉には施すという尾州久田流独自の入念な灰形「片手灰」です。聞くところでは、宗匠はこの灰形をつくるのに現場で1時間半をかけたとか。根気仕事です。瑞晃宗匠亡き後、さらに流儀を継承、発展させてゆく気概が感じられた灰形でした。

IMG_6172.JPG

 古道弥造の四方釜を乗せた姿は映りよく、井戸手擂盆の水指を添えた点前座の風情、格調は初風炉の濃茶にふさわしいものでした。

IMG_6170.JPG

IMG_6171.JPG 

 八勝館は、名古屋市街東方の丘陵地に所在する料亭。起伏に富む疎林に建つ9つの建築棟は、明治期に遡る希少な数寄屋の別邸建築を基盤として発展し、優れた和風デザインが集成し、建築群は国の重要文化財に指定されています。日本を代表する料亭であり、見事な庭園美は訪れるたびに感動を覚えます。

IMG_6157.JPG

 なお、薄茶席2席のうち、表千家小栗宏子さん担当の田舎家の模様は、後日アップします。