桃丘会70周年記念茶会
茶人垂涎の楽焼・歴代宗匠茶杓展
薄茶3席 表千家・裏千家・松尾流揃い踏み
1950(昭和25)年に愛知県一宮市の真清田神社に完成した茶室「桃丘亭(とうきゅうてい)」を会場に営々と続く月釜「桃丘会」七十周年記念茶会が2022年5月21日、同神社で開幕しました。22日までの2日間に延べ700人を超す茶客が集う一大盛事です。
記念茶会は、当初は2020年開催予定でしたが、コロナ禍で2年続いて延期され、3年越しでやっと開催に漕ぎつけました。
千家系の茶の湯が盛んな土地柄を映して、2つの注目すべき展観席「楽吉左衛門家歴代茶碗展」と「(表千家)歴代御家元宗匠茶杓展」が両日限定で開催されました。楽初代の長次郎の黒楽・銘「南極」に始まり、前衛陶芸家として鳴らす15代直入の銘「稲妻」まで、茶人垂涎の楽焼が一堂に並びました。展観席床には利休居士像と辞世賛の掛け軸前に、豊臣秀吉から拝領した滝川豊前守家伝来の古瀬戸茶壷が荘られ、重厚さがいや増しました。
もう一つの千家歴代家元の手造り茶杓展とも、茶道美術展でもなかなか見られない贅沢な特別展です。表千家不審庵から楽家に伝来したとされる千利休共筒の茶杓に始まり、先代表千家家元14代而妙斎まで、歴代宗匠の茶杓が共筒、箱書とも展示され、茶道愛好家、好事家たちが見入っていました。両展とも監修は「一宮世話人」で、桃丘会の茶器レベルの高さ、道具蓄積のほどを物語ります。
ウイズコロナの茶会らしく、茶席3席は全て薄茶でした。表千家は桃丘亭で。点前なしで道具荘りを鑑賞し点て出しの茶・菓を喫する形式でした。大勢の来客を見込んでのことでしょう、茶道家主体の茶会では珍しいことです。記念茶会なら、3席のうち1席は濃茶を期待したいところですが、時勢のなすところとはいえ、ちょっと肩透かしです。
花は、ササユリにツクバネテッセンを添えて、竹置筒の花入に。ともにまだ、蕾が硬く、茶花まで事前に印刷した会記に書きこむことの難しさを感じました。
裏千家と松尾流は冠婚葬祭場「参集殿」の2階と1階の広間を使って、立礼式で茶会を行いました。
初日は午後からはとくに空いていて、主客ともゆったり、くつろいだ雰囲気で、のどかさが漂う感じ。
裏千家席の花は桂籠を小ぶりにした竹籠に、撫子や蛍袋、山紫陽花などをにぎやかにバランスよく投げ入れてありました。
松尾流席は、当代家元松尾妙玄斎の短冊を掛けた歌花筒に夏椿一輪を投げ入れ。家元好みの立礼棚に、松尾流好みの姫瓜形の茶釜と人間国宝加藤卓男さんの名作「青釉銀華」の水指が映えていました。
尾張の国一宮は戦前から茶の湯が暮らしに根付いており、「野良着のまま」「仕事着のまま」が合言葉になって、産声を上げたのが桃丘会とされます。時代は変わって、茶器の吟味には厳しく目が肥えても、どこか、のどかさがあるのが桃丘会の良さだと感じました。
なお、記念茶会は前売りのみ、当日券の販売はありません。