見る・遊ぶ

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表千家中山朝子さん弥生釜
春堤をゆく風情謳歌
堂々たる清巌の墨蹟
桃丘会コロナ禍明け再開

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愛知や、東京、大阪など18都道府県で適用されていた「まん延防止等重点措置」が全面解除された2022年3月22日、「茶どころ一宮」を代表する月釜、桃丘会月釜が愛知県一宮市の真清田神社内の桃丘亭で開かれました。

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桃丘会で弥生3月に月釜が開かれるのは2019年以来、3年ぶり。表千家中山朝子さんは春本番の到来を寿ぐ祝祭感の中に、禅味をたたえた格調を心棒として打ち立て、茶客をもてなしました。

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桃丘会は4月の献茶祭以外の月次茶会は薄茶一服。とはいえ、繊維産業が栄えてお茶が興隆した遺風が残る一宮。取り合わされる道具のレベルは高く、名古屋圏では最も長い歴史を刻む月釜の一つです。会員の来場を「午前」「午後」に分けて、分散参席を図る工夫が目を引きます。

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寄付に、表千家13代即中斎宗左が望月玉成「春堤図」に「春風や堤長うして家遠し」の句を讃した画賛を懸けて、これに呼応するように茶花は、薬師寺古材の木地花入に、弥生には珍しい5種生け。白椿・銘「都鳥」、赤侘助、貝母、利休梅、鶯神楽。

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茶の湯の春堤といえば隅田川。隅田の堤を歩けば、「伊勢物語」では旅を続ける男が「名にし負はば いざ事問はむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと」と歌を詠んで望郷の念にかられたり、鶯の初音を聞いたり、汀で貝を採ったり、茶花の名称からさまざまな感興が湧き上がります。侘助、利休梅は千利休好みの茶花として名高く、「利休忌」への席主の思いを汲み取ることもできるでしょう。

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会記では、茶碗は啐啄斎手造り黒楽、楽家13代 惺入(せいにゅう)作の赤楽、永楽即全作の色絵朝明と表千家の正道をゆくラインナップが寄付に展観。一方、会記には載せない席中使いの茶碗は席主の趣味性豊か。御本弥平太、高台が乳足状になった古萩、桃山美濃陶写しの名人だった加藤十右衛門の最上手の黒織部など。流派を超えて楽しめる茶碗群に、席主の心意気が感じられました。

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点前座はどっしりした大西浄雪の布団釜に、越前カキカラ写しの重厚な水指。床が立派。茶席で重んじられる清巌和尚の堂々たる一行「直指人心」があたりを払います。人間が生まれながら持っている仏性を直接に体得せよという禅語です。菓子は、地元一宮の川村屋賀峯の銘「春風」。同店名物の羽二重を草餅でつつんだ京菓子です。

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次回4月17日(日)は松尾流献茶祭。濃茶席・岡本宗尚さん、拝服席・竹之内宗文さん、協賛席・松岡禮子さん。茶券代3,000円。