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城山八幡宮月釜 7か月ぶり再開
荒木宗鈴さん茶数寄の面目
土屋宗芳さん 型破り数々

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 今年4月以降、コロナ禍で休止状態だった城山八幡宮献茶会の月釜が2021年11月23日、名古屋市千種区城山町、城山八幡宮の茶室献「洗心軒」で、7か月ぶりに再開されました。松月亭(7畳間)席主は裏千家の荒木宗鈴氏。「ヘアピン2本だけで大丈夫」という茶筅形の髪型がトレードマークの大ベテランです。コロナ禍が収束に向かってきたのを幸い、当初予定の3月から、振り替えでの登場となりました。

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 寄付に名古屋の復古大和絵派の木村金秋の「秋山鹿遊」図を掛けて、本席は鵬雲斎筆の一行「秋風満万野」という秋づくしの室礼。外は時雨模様、既に初冬の風情です。季節が進み茶趣として時期を逸した感はあるものの、「鵬雲斎千玄室」を大宗匠の尊称を付けずに「鵬雲斎筆」「鵬雲斎箱」と書くあたり、長老ならではの見識でしょう。

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 「秋」「炉開き」をキーワードに、織部はじき香合、三島立鶴の珍しい水指、銘「一声」の茶杓、山本春正の秋草蒔絵棗、、、などの茶器が共鳴します。主茶碗は御本御所丸、銘「白雲」。席主は千家流では珍しく、楽焼より高麗茶碗びいきのようで、席中でも伊羅保、堅手茶碗などが披露され、数寄者の茶会のような自由な取り合わせが印象的です。

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 花は西王母椿にハシバミ。見どころ多い茶器が数ある中で、何故か茶花はごくあっさり。

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 下町風の名古屋弁を操る席主本人も一服相伴し、笑顔満面です。

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 このあと、お隣の茶席にも客として現れ、もう一服。無類のお茶好きの面目躍如で、微笑ましくありました。

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 一方、招月庵(9畳間)は表千家流の若手、土屋宗芳(土屋るみ)さん。主宰する「椿の会 テーブルスタイル茶道」は急成長し国内外に現在140名の方が認定講師がいる、テーブル茶道界の成長株です。

 今回は表千家の宗名での懸け釜。テーブル茶道で破竹の勢いの席主がどんな釜を懸けるのか、楽しみに伺いましたが、人を惹きつける立板に水の説明と、茶の湯の「約束ごと」から離れた取り合わせ、使いように、驚かされました。

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 お軸すらない簡素な寄付。立派な床に対して、この花。何より、炉開きに銘「魚群」の平茶碗。なんと正客用です! 暑中に用いる平茶碗を初冬の席に出す豪胆さ。 

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 極め付けは、茶釜の据え方。「降り蹲」という露地の工夫がありますが、炉縁より釜の口が低い、意表を突く「降り釜」です。点前が始まり、釜に柄杓をかける段になると、柄杓の柄の端が空を突く。こんな釜の景色は、他では見られない。ある意味、ご馳走かも。常識破りが次々。

 もう何かしらの主義、主張なのかもしれません。

その意図や那辺に。

 「これは御流儀のやりようなのでしょうか」と尋ねると「いえ。この席の炉壇の設定がこうなので」と、意外なご返事でした。

 五徳が低いすぎるのなら灰を足したり、五徳の下に耐火煉瓦を敷いたり、釜の位置の上げようはあるはずですが、、。

 茶道口から楽屋裏が丸見えなのも、大胆です。WEB茶美会編集部としては、荷物置き場が茶席写真に写り込むのは避けたく、ご亭主に老婆心ながら茶道口の襖

IMG_4122.JPGを閉めた方がよろしいようですよ、と声がけしてみました。しかし、その後も襖は開けっ放し。実におおらかです。掲載写真は、背景をトリミングしたものです。

 開炉定番の亥の子餅は、珍しく京都の老舗製。女将が出来立てを、京都から名古屋へ届けに来てくれたそうです。人脈をさらっと披露したり。茶の湯から派生したテーブル茶道を、急普及させる才覚をお持ちの方です。話しぶりは人をそらせません。椿の会主のお人柄に触れた一会でした。

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(⇦茶美会マスコットキャラクターの「さびぃ」です!。WEB茶美会初登場です)

 城山八幡宮の次回の月釜は12月23日。当日券、薄茶2席で1800円です。

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境内の「献華殿」には、池坊の5人が花を生けてあり、参拝客の目を楽しませていました。

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