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「吉祥会」神谷柏露軒さん開炉先陣
茶壺、茶臼‥見どころ満載
「茶美会大茶会」乞うご期待

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 茶どころ名古屋を代表する茶家の当主、神谷柏露軒(宗舎長)氏が2021年11月1日、名古屋・栄の名古屋美術倶楽部を例会場とする月釜「吉祥会」に懸け釜をし、見どころ満載の室礼で口切りの茶の先陣を切りました。神谷氏は11月27日に開幕が迫った茶美会第一回茶席の懸け釜を担当、期待が高まります。

 本席「葵の間」と次の間の襖を取り払って27畳の大広間一室に模様替え 。コロナ禍仕様で茶席、寄付を同じ部屋としながらも、床・点前座寄りの4分の3を客座として赤毛氈を敷いて仕切り、道具展観の寄付と区画する空間演出です。茶席らしい一座建立の雰囲気を醸しつつ、感染対策の両立を図るこの工夫は、見習いたいものです。

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 プロローグの寄付掛けは、江戸前期の狩野派の絵師、久隈守景の「熟柿図」。これに呼応して、本席の掛け物は裏千家又妙斎筆の横物「開門落葉多」、時雨を歌った歌銘のある徳川斉荘公作の共筒共箱の茶杓、利休七種楽の赤茶碗「木守」写(長入造)と、晩秋の茶趣を醸します。

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 炉開きで喜ばれる「織部(おりべ)」「瓢(ふくべ)」「伊部(いんべ)」の"三べ"の織部弾香合、瀬戸十作丈八作の織部ウロコ文茶碗、玄々斎書付の瓢手付炭斗、替え茶碗には山本陶秀作の備前焼など、しっかり"三べ"の定石を踏みます。主菓子は亥の子餅。茶の湯の世界では、亥の月亥の日(今年は11月11日)を炉開きの日としており、これに先がけてのうれしい茶席菓子。

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 清らかにうっすら桃色に膨らんだ西王母椿の蕾と、微かにすがれ始めたハシバミの取り合わせも炉開きにふさわしく、長大な唐物盆に載せた古銅長角管耳の花入に、よく映っておりました。

 

 点前座は大西家6代目の古浄元の尻張釜に、4代宗哲の真塗手桶水指、替え茶器は刷毛目の立った薄手の塗り(五郎塗)の藤村庸軒好の凡鳥棗と、名品揃いです。席主自ら点前をさらさらと行い、正客に茶碗を立てて出すと、その後は立て板に水。趣向、お道具の説明を滑舌よくすらすらと。

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 席中の茶碗は、いっさい数茶碗を使わず、近現代の作家ものを取り揃え、中里太郎右衛門の彫唐津など、さすが目利きが選び取った茶碗はいずれも見どころ多く、席主の選択眼の確かさが伝わってきました。

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 脇床に目を転じると、3本の紐を真行草に結んだ茶壺が目を引きました。トロっとしたビターチョコレートのような釉薬がかかった古瀬戸の茶壺です。神谷さんは「今川義元が好んだ古瀬戸の唐四郎焼です」。驚きました。戦国時代の瀬戸の幻の名工、赤津三郎右衛門の義元好みの茶壺と直に対面できるとは。
 駿府に居城した今川氏は、室町時代から戦国時代、尾張にも勢力を広げ、天文(てんぶん)-弘治(こうじ)(1532〜58年)のころ、赤津三郎右衛門は今川義元の命で、尾張瀬戸の品野窯で全面に釉をかけた茶入れ追覆手(おっかぶりで)の茶入を焼いたといわれます。茶入ばかりでなく茶壺を焼いたとしても不思議でなく、今川氏支配下の瀬戸茶陶を物語る貴重な伝世品として、注目されます。

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 さらに、脇書院には、小ぶりな茶臼と石挽きした抹茶を入れる挽溜(ひきため)の茶入が飾ってあるではありませんか。丁寧に碾茶(てんちゃ)まで添えて。箱書に書かれた由来がふるっています。かの茶人大名、松平不昧から拝領したものだといい、参勤交代の道中、不昧公は携行したこの小茶臼で抹茶を挽かせて、引溜に貯蔵。香高い碾きたてのお茶を喫していたのでは、と想像するだけでも、楽しくなる道中茶臼。超珍品です。
 口切り、炉開きの茶として、まさに十全十備な室礼。見るべきものがおおすぎてもう満腹、はちきれそうです。コロナ禍で1年半余の茶会の空白によって、傷んだ茶道、茶会。その魅力をもう再認識してもらおうと、自著『尾張の茶」に所載した名品茶器を惜しげもなく披露した席主の情熱。そして、お蔵の深さに脱帽しました。

 同時開催の「かね吉骨董市」は、値打ちな茶器が多数並び、朝から大勢の茶客で賑わいました。茶席に入っていた半刻の間に、並んでいた道具がごそっと少なくなって、道具商の顔が綻んでいました。

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 なお、神谷柏露軒氏は来る11月27日(土)、28日(日)開催の織田有楽斎没後400年記念茶美会第一回大茶会の薄茶席(初日)の席主を務めます。名古屋郊外、八事山の竹林に抱かれた広大、美景が広がる名古屋きっての名刹の茶席群を会場に、濃茶は、有楽流拾穂園の長谷義隆氏が両日担当し、有楽斎が生きた織豊時代から江戸前期の大名茶・武家茶の世界を彷彿とさせる趣向でお迎えします。大茶会には茶どころ・花どころ・芸どころ名古屋を代表する茶・花・芸道家が集結、濃茶、薄茶のほか、花道の鬼才小川珊鶴氏が奥三河の民衆茶「桶茶」とコラボするアーティスト席、現代陶芸と古今の多様な美術品を取り合わせた立礼席、懐石専門店の点心弁当を楽しんでいただく「点心席」。さらに、茶の美、和の美を表現する気鋭4組が出演するライブ席がある、新基軸の茶会フェスティバルです。

 当サイトを運営するNPO法人茶美会日本文化協会主催の非営利の先進的な取り組みとして、愛知県の文化活動事業の助成対象に、茶会としては初めて採択されました。内容の充実ぶりに対して、大変値打ち、破格の料金設定です。全席を楽しめる会員券(12,000円)を絶賛発売中です。茶券は茶美会日本文化協会、各席主・出演団体ならびに八事山興正寺にて頒布中。定員になり次第、販売を打ち切ります。

 

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 織田有楽斎没後400年記念事業 茶美会(さびえ)第一回大茶会
主催 特定非営利活動法人茶美会日本文化協会
共催 茶美会大茶会実行委員会(茶美会日本文化協会、八事山
興正寺など約10団体で構成)
特別協賛 八事山興正寺
助成 愛知県文化活動事業費補助対象事業に採択

日時:令和3年11月27日(土)、28日(日)9:00~15:00
会場:名古屋・八事山興正寺(市営地下鉄八事駅下車徒歩3分)
境内茶室(竹翠亭、耕雲亭、想耕庵)、普照殿
内容:濃茶席(両日)   有楽流拾穂園主・長谷義隆
薄茶席(日替わり) 11月27日 裏千家・神谷柏露軒
11月28日 宗徧流・高山宗徳
アーティスト(桶茶)席(両日) 花道家小川珊鶴
立礼席(両日)   壺中天Cha 友の会
和美・茶美ライブ席(午前午後2回交代上演)
11月27日  浅井りえ「箏曲千景の会」
書家浅井微芳の「筆舞」
11月28日  民謡藤栄会三味線アンサンブル「PURE」
ジャズダンス三代真史「三代舞踊団」
加藤おりは映像作品「ORIHA KATO Wabi-Sabi PROJECT」随時上演
点心席 (会員券の方のみ、普照殿2階ホール)
茶券(税込)
会員券(全席参加可、ライブ鑑賞、点心弁当付き)
12,000円
U25券 (茶席2席参加可。ライブ鑑賞)2,500円 ※満席
立礼券  (立礼席+ライブ鑑賞。当日券あり)1,500円

茶券は茶美会日本文化協会、各席主・出演団体ならびに八事山興正寺にて頒布中。定員になり次第、販売を打ち切ります。

申し込みは
〒492 8456 愛知県稲沢市氷室町630番地
特定非営利活動法人 茶美会日本文化協会
電話 080 5138 8001
FAX 0587ー36ー0019
mail  sabiejapansince2021@gmail.com

茶美会第一回大茶会茶券申し込み状
令和3年 月 日
茶美会大茶会実行委事務局(茶美会日本文化協会内)宛

◎希望日【 】11月27日(土)会員券 枚
【 】11月28日(日)会員券 枚
希望日に◯を記入し、枚数を明記してください。
会場 名古屋・八事山興正寺(地下鉄八事駅下車)
◎ご所属名(流派・社中名など)
◎お名前
◎同伴者お名前
◎振込名義人様の氏名 カタカナで
◎代金合計       円
一枚1万2千円(茶美会員は1万1千円)
◎郵便番号、住所、電話番号

◎メールアドレス