見る・遊ぶ

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粋な野趣競演 豊国月釜
小栗宏子氏は旅箪笥
水野宗佑氏は茶箱で

 豊国神社献茶会の月釜が2021年4月18日、藤の花が見ごろを迎えた名古屋・中村公園内の公共茶室で開かれました。想定を大きくなる超える当日会員が来場し、豊国さんでは近年まれな賑わいとなりました。

 表千家小栗宏子氏、裏千家の水野宗佑氏と両流の名古屋地区幹部が席主を務めたこの日。あいにく、黒雲がむくむく、時ならぬ時雨が降ったりやんだりの荒れた天候ながら、茶会日和の日曜、有力席主の登板とあって、雅客は引も切らず。コロナ禍どこふく風の盛況でした。

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 大正天皇ゆかりの記念館での薄茶は小栗氏が担当。縁側のガラス戸まで開け放って、寒いくらいの抜群の風通し。表千家の即中斎の豪放な筆致の一行「花開万国春」を掛けた床に、豪放な書の覇気に呼応する堀内家初代仙鶴作の大ぶりの竹一重切がどっしり鎮座します。
 騎馬武者の母衣を広げたような大きな葉が印象的な熊谷草が一輪。道具畳は野遊びの風情を醸す旅箪笥に釣り釜の取り合せです。 

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 皇太子時代の大正天皇の行幸を迎えるため建設されたこの記念館は、貴賓を迎える書院建築で天井はかくだんに高く、しかも近年の改修後は炉が電熱式に制限されているため、釣り釜を試みる席主はこれまでほぼ皆無でした。小栗氏は、常の鎖では届かない高い天井のヒル釘に、鎖の先端に釜鐶4個を鎖状に繋げて釜を吊りました。電熱の上に筒釜を掛けての釣り釜風のため、ゆらゆらと釜は揺れないものの、雰囲気は味わえる趣向です。

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 かたや広間茶室「桐蔭」席主、水野宗佑氏は、同じく野遊びをテーマにしながらも、おしゃれで小粋な茶箱の趣向です

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青い麦穂を巡らせた風炉先「花屏風」で囲い、花ゴザを敷いた道具畳、緑の釉薬の瓶がけに銀瓶を懸けた室礼です。
 お姫様が茶箱を携え、青麦の穂がそよぐ春野に遊ぶ、雅やな野だての風情です。裏千家淡々斎が創案した茶箱和敬点により、薄茶が供されました 。
 こぶりでかわいいいお茶碗の数々に、女性客から思わず歓声があがっておりました。

 席主のセンスが光る見立ての茶器に、本筋の寂び道具を織り交ぜて、遊び心がうわ付かない取り合わせが心憎いばかりです。

 なお、コロナ第4波により、3月に再開された豊国さんの月釜は5月はやむなく中止となり、6月20日の再開が待たれます。