味わう

　

　桃色侘助（わびすけ）の代表種、有楽（うらく）椿が愛知県稲沢市の有楽流拾穂園で咲き出しました。昨年より2週間遅い開花ですが、一輪咲くや、砲弾形の先っぽを桃色に染めた蕾が次々現れ、お正月には一気に咲き乱れそうな勢いです。


　大名茶人織田有楽斎(1547〜1621年)が茶席の花として好んだことから、その名を冠して呼ばれます。一重咲きの侘助椿の一種で、鮮やかなピンクが印象的な花です。太郎冠者（たろうかじゃ）、淡侘助、地方により呼び名が違うようですが、異名同種です。


　椿は数あれど。茶人の名が付いた椿はごくわずか。織田有楽斎を流祖に仰ぐ者ならずとも、戦乱の世に和平を希求した武将茶人の心根が感じられる、楚々とした花です。