味わう

味わう

一器・一花・一菓
盛夏に忍び寄る初秋
ススキの穂、紫蘭の朽葉、青栗を添え
黄瀬戸・鉄釉の掛け分け花入

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 連日、体温超えの猛暑が続きます。盛夏の茶会は涼感が一番のごちそうとはいえ、見た目、肌触りなど五感に涼を訴えるだけでは、ちょっと物足りない。これほどの暑気を少しでも払うには‥‥。思いついたのが、夏の盛りに忍び寄る秋の足音をいかに取り込むか、でした。

 先月末開いた拾穂園四季の茶の湯。初秋の花材集めに奔走しました。

 いち早く穂がほころぶススキを求め土手を巡り、実を付けた紫蘭のうち葉が朽葉色にすがれたのを選び、底紅の木槿を芯に据え、さらに青栗を添えて。季節の移ろいを先取りしました。

花入、栗は小間の板床に直置きでもいいのですが、ちょっとひと工夫。花台代わりに錆竹と蔓で編んだ扇面を敷いてみました。

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 花入も色味が秋を感じさせる器を。黄瀬戸と鉄釉の掛け分けを選びました。古瀬戸の2大施釉法である鉄釉と灰釉。灰釉から発展した黄瀬戸釉を下半分に、鉄釉を上半分に施釉し、古瀬戸から黄瀬戸への発展過程を体現したような珍器です。
器形も、大陸から舶載された金属器や花器を模倣した古瀬戸の名残りを見せて、花映りよく、けっこう重宝しています。一代で収集した品々で美術館を残した某コレクターの遺愛品というのも、うなずける花器です。
 掛け軸は、晩夏の夕暮れの風情を詠った、霊元天皇自詠ご宸筆。一陣の涼風が初座の席に吹き抜けました。

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