一器・一花・一菓
古瀬戸にシモツケ、センノウ
残欠掛け花入の茶味
行きつけの骨董商の店の片隅に置かれていた古瀬戸仏花器の残欠。
灰釉の色が渋く、発掘品であるため、ところどころ釉薬が剥離してますが、その侘び加減。よほど窯の中の炎が強かったのか、火炎で吹き飛んだ陶片がひっついた風情も面白く、中蕪から高台へ至るシャープな造形にひかれて、15年ほど前に求めたものです。
据えて置くより、掛け花入にした方が茶室には映ると思い、花環釘をうってもらいました。
完器に近い古瀬戸仏花器も手元にありますが、古瀬戸の掛け花は意外性があり、上部が欠けているからこそ時に花映りがいいこともあります。
このたびは、初夏を彩る、楚々とした霧ヶ峰シモツケと、マツモトセンノウの白花を投げ入れてみました。
この残欠花入にはいくつかの想い出があります。東日本大震災のあった2011年の秋、被災地の復興を願った茶会を催した際、この花入を床柱に掛けました。10月の「名残り」の時期でした。仏花を供えるための祈りの造形、壊れても失われてもまた再生できるという人為が宿る花入として。
楚々と生けても映りはいいのですが、思いきって直径50㌢ほどもある大ぶりの枝物を生けたことがあります。なりは小さくともよく茶花を受け止めて、さすがはよく焼き締まった古瀬戸だと感心しました。
取り澄ました茶器を取り揃えた茶会の中に、趣向によっては、思いきってブチ割れを挟みこむと、アクセントになるのではないかと思いますが、いかがでしょう。