味わう

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有楽椿 命日に初咲き
遺徳しのび有楽忌茶会
拾穂園で

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 織田有楽斎(1547〜1621年)の命日にあわせるかのように、有楽椿が一輪、初咲きした2022年12月13日。愛知県稲沢市の有楽流拾穂園で、有楽忌茶会が営まれました。

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 有楽椿は一重咲きの侘助椿の一種で、鮮やかなピンクが印象的な楚々とした花です。太郎冠者(たろうかじゃ)ともいいますが、有楽斎が好んだことからその名を冠して呼ばれます。拾穂園の樹高3㍍弱の有楽椿はおびただしく花芽がついて、砲弾形の蕾を膨らませていますが、有楽忌に間に合ったのは一枝だけでした。

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 兄、織田信長の生誕地、勝幡城址に近く織田家勃興の地にある拾穂園では、千利休亡き後、天下の数寄宗匠と呼ばれた大名茶人の有楽斎の遺徳をしのんで、毎年この時期に同門や有縁者が集って記念茶会を開いております。

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 この日は、脇床に菩提寺に伝わる「正伝院殿如庵有楽大居士肖像」模を掛けて、茶と菓子をお供え。本席床には沢庵禅師自詠の双幅の軸前に、和蝋燭を灯して、会衆が般若心経を斉唱しました。

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 いったん席改めのあと、濃茶、薄茶が振る舞われました。燭台をさげて、有楽椿とこれも初咲きのホトケノザを投げ入れた胡銅鶴首花入を飾りました。点前座に棚に水指、仕服に入った茶入を置き、ちょっとした模様替えですが、茶席の雰囲気は劇的に変化します。お客の嘆声があがりました。

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 茶花釜は有楽斎好みの阿弥陀堂釜、水指は嫡男で「桃山時代一のかぶき者」と呼ばれ茶人としても名高い織田左門道八の手造りの黒楽共蓋。茶入は、肥前松浦家伝来の古瀬戸翁手。濃茶主茶碗は、景色豊かな高麗茶碗、雨漏堅手など。数寄大名有楽斎の命日に相応しく、その遺徳と有楽流の流風を伝える取り合わせを、会衆は楽しんでいました。

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 広間席から見える庭では、真っ赤に燃えたドウダンツツジや楓の照り葉が、秋の名残りを見せていました。

 撮影・中川高史