味わう

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一器・一花・一菓
侘び茶碗の最高峰「井戸」の魅力
カイラギ、竹節高台、轆轤目‥

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 朝鮮半島で15世紀から18世紀初頭にかけて焼かれたさまざまな「高麗茶碗」を年間テーマに、拾穂園で開いた本年の茶器研究会。トリは、井戸茶碗でした。人数を絞って開催した茶器研究会で鑑賞してもらった井戸茶碗の魅力を、広くWEB上で紹介します。

井戸茶碗には「約束」があります。まず、口に向かって胴が開いた朝顔形。

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全体にすっぽり枇杷色の釉薬がかかって、高台内まで釉がかかっている。

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内部の見込みに目跡(重ね焼き最上部の一枚は目跡なし)。
胴に雄渾な轆轤目がある。

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竹節高台(たけのふしこうだい) 。竹の節の上下わずかのところを切り取ったような形の高台)が鋭く削り出されています。
高台内が兜きん状。

高台内外に、レース状の釉薬のちぢれである梅花皮(かいらぎ)=カイラギがあること、です。

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 「一井戸、二楽、三唐津」「一井戸、二萩、三唐津」ともいいますが、井戸の首位は揺るぎません。信長、秀吉の天下人が活躍した天正時代以来、侘び茶碗の最高峰と位置付けられてきました。

 私見では、外見より、懐がぐっと深く、小宇宙を内に抱くようであり、外に手取りが軽い。茶だまりの深さは一際。高台が兜きん状になっているのは、ギリギリまで内側を深くしてあるから、と見ています。
 全て備わっているのは天下の名碗とされます。一つ、二つ、あるいは幾つか欠けている井戸は多いのですが、約束を一つでも多く具備しているものほど上等とされます。

 井戸茶碗は1578(天正6)年の茶会記が最初の記録です。一方で1555年に没した武野紹鴎所持の伝来を持つ井戸「蓬莱」「紹鴎井戸」があり、おそらく天文年間(1532~55年)には朝鮮半島から請来されたとみられます。
類似した形ではあるが、決して同じ作ゆきのものはない、大らかさ、確かな格調が備わっています。

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 次回12月13日(火) 拾穂園四季の茶の湯&茶器研究会は有楽忌茶会&高麗茶碗Ⅹ 優品セレクション編です。
知が生んだ数寄大名・織田有楽斎の命日(12月13日)にちなみ、有楽斎並びに織田家ゆかりの茶器を軸に、本時代の武家茶を再現。午前の部は冒頭、般若心経斉唱後、供茶式あり。濃茶・薄茶の2服後の茶器研究会年間テーマ「高麗茶碗」の優品を特集。高麗青磁、ととや、伊羅保、五器、雨漏り堅手などバラエティ豊かな高麗茶碗の見どころ、見極めポイントを実物とともにお話しします。10時30分から。人数限定。
一般7,000円。茶美会会員は1000円引き。

 

申し込みはメールで。
sabiejapan2021@gamail.com