味わう

味わう

一器・一花・一菓
耳付籠に初咲きの木槿
引き摺り壁が名脇役

 茶美会日本文化協会の本部茶室「拾穂園」の庭にある木槿が、咲き出しました。茶花では「炉の椿」「風炉の木槿」と言われる、風炉を代表するの茶花がムクゲです。

 数日前から蕾が膨らみ、紅白の手ふきを絞ったような姿を見せていましたが、今朝、一気に咲きました。


 「底紅」と呼ぶ中央が紅の木槿を、時代の耳付籠に投げ入れ、床の間に飾ってみました。
 軽快な引き摺り壁が、初咲きの木槿を際立たせます。壁に映った影が幽遠さを添えます。

引き摺りとは、壁の表面に引き摺ったような波型の文様を付ける工法です。
IMG_6445.JPG 拾穂園の広間席は全体に、波や風の揺らぎを感じさせるように、壁は引き摺り、襖は青海波文様の唐紙などを用いて、軽快さが感じられるようにしております。
向暑に向かう風炉の季節、茶席では軽快さ、爽やかさは何よりのご馳走です。

 先日催した茶事で、見識豊かなご正客がこの引き摺り壁をしげしげと眺め「すごい技術ですね。京都から左官を呼び寄せたのですか」とお尋ねがありました。「施工は名古屋の職人です。地元業界きっての腕利きに頼みました」。探せば、腕の良い職人は地元にいるのが、茶どころ名古屋の強みです。