見る・遊ぶ

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「龍を何匹見ーっけ」
謎掛けが興を呼ぶ初釜
最低7つ 見立て楽しく

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干支の辰(龍)をいくつ、初釜に忍ばせるか。厳粛なお茶もいいけど、めでたい席は遊び心が、ご馳走。2024年1月7日(日)、名古屋市東区橦木町「文化のみち橦木館(しゅもくかん)」であった市民茶会「寿ぎの初釜 武家茶道で味わう初春」では、最低7つ、見立て次第では最高9つの干支を、忍ばせておきました。さて、いくつ龍を見ーっけ。

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道具展観を兼ねた寄付でお客さまに「いくつ龍がいるか、あててみてください」。こんな謎掛けに、知的好奇心をそそられるのか、お茶の通も初心者も興味津々。受け身ではなく、前のめりになるようです。ゲーム仕立ては、もとより茶道の本旨ではありませんが、茶趣を高める仕掛けに、客は次第に乗せられてノリノリ。大寄せ茶会の一座建立を図るための座興です。

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芝居で言えば、配役表とシナリオを兼ねた使用茶道具のランアップである茶会記。会記には書くまでもない端役や、サプライズのためあえて書かない物、あるいは見立てに、凝るのが席主の働き。そこに、謎掛けアイテムを忍ばせるのです。
この日は、最低7つ、連想を働かせたら9つの龍が潜んでいたり、現れたりするよう、仕組んでみました。会記に載っているのは、このうち3つです。

まず、寄付には2つ。展観の茶杓を飾る出し帛紗。龍の文様が織ってあります。告知のチラシなどを置いた長イスに、添え物で置いた宝袋形の匂い袋に龍の文様が。

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庭の小間茶室を袴付として、水墨画家福田泰古さんがこの日のために描き下ろした雲龍画を床に掛けました。ここまでは、わりと簡単ですね。次第に難易度を上げるのが、ゲームのコツ。
寄付から本席の書院へ進む廊下。おっと、窓の外の大きな沓脱石に、何やら。伏龍ならぬ、菖蒲の葉などで編んだ双龍が、昇天の機をうかがっています。

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さて、いよいよ本席へ。ちょっと注意を払えば分かるのが3つ。煙草盆の中に、雲龍文の古伊万里の火入れ。違棚には、ダックスフントの置き物。いえいえ、干支のドラゴンちゃんの匂い袋。

 お客から見にくい場所に置かれた挽き切りの青竹は、あえて竹の小枝2本を切り残して、龍の角に見立て、青龍の如し。有楽流の点前では、蓋置を奇数回回して見せるので、点前を熟視していれば、蓋置の異形に気づくことでしょう。

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あと2つは、ちょっとこじつけ風(笑)。投げ入れた有楽椿は、枝が龍のように屈曲して蕾は頭をもたげた龍のよう。さらに、床の間空間になびく結び柳は、あたかも龍のヒゲのようでもあります。

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素直に見たら7つの干支、ムリ無理だと9つ。龍が忍んでいたことになります。けっこうマジに目を凝らしていたお客さんもいて「6つまでは見つけたけど、全部見切れなかった」。残念、全部当てたお客はいませんでした!

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「えー、どこなの」。そんな嘆き節を背に受けつ、大寄せ茶会のこと、全部明かすいとまなく、失礼いたしました。WEB茶美会で、種明かしする次第です。

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 実は、干支だけでなく、吉祥づくしの鶴と亀、金と銀、紅と白、翁と嫗、高砂と住江など、めでたいシンボル、カラーをさまざまに散りばめて、初釜を構成しました。茶会は五感全開にして味わうもの。新年早々、席主の遊び心にお付き合いいただき、感謝申し上げます。