見る・遊ぶ

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豪華襖絵"借景"に御殿さながら
名古屋・橦木館「寿ぎの初釜」
書院本来の格調引き出す武家茶

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ふだんは個展やグループ展、ワークショップ会場として使われている和室が、本来の書院の格式を取り戻し、雰囲気が一変しました。2024年1月7日(日)、名古屋市東区橦木町「文化のみち橦木館(しゅもくかん)」であった市民茶会「寿ぎの初釜 武家茶道で味わう初春」です。

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遠山を描いた豪華な襖絵を"借景"に、尾張藩の御家流であった武家茶道の古流を受け継ぐ有楽流拾穂園(尾州有楽流)の優美なお点前が披露され、大名御殿さながら、初春絵巻が繰り広げられました。

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 指定管理者が変わって橦木館の新春催事は一変。この日を楽しみに訪れたお着物姿の女性客や、チラシやホームページで開催を知って来場した人たちで、賑わいました。本格的な凛とした格調の一方で、幼児連れでも席入り可。市民茶会ならではの懐の広さと前売り700円(当日800円)の低廉さが特長です。

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橦木館は、江戸時代は武家町だった名古屋有数の高級住宅地の一角にある、大正末期から昭和初期に建てた元陶磁器輸出商の邸宅です。敷地には和館、洋館、東西2棟の蔵、茶室、庭園が今に伝えられています。

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初釜会場の和館数寄屋の書院は、床の間に違棚、付書院を備えた本式。ふだんは外されている建具をはめると、表情はガラッと変わります。特に、次の間とを仕切る襖は、畳3畳分は通常6枚のところ、4枚という御殿サイズ。雄大な遠山の景色が、大和絵伝統の砂子箔絵(すなごはくえ)技法で描かれ、見栄えする襖絵が展開します。

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小間の茶席が庭園にあるので、ここはあくまで書院式。釜を据える炉は切ってありません。このため、ここで茶会をするときは、風炉釜でのお点前になります。

 この書院の知られざる魅力を引き出したこの日の初釜。常の茶会では滅多に見ることができない左右が逆の「右勝手」、しかも古流が連綿と師弟相伝で続いている有楽流の優美で剛健な点前は、お茶を知っている人は興味津々のよう。

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 中には豪州シドニーから来日中という方は、室礼と点前をじっくり鑑賞するには一回では足りず、再び席入り。そんな遠来のお客に、せめてお菓子はだけは違うものをと、予備に用意してあった別種をお出しして、楽しんでもらいました。