名古屋城茶会の世話人・岡江智子さん
国府宮「三笑茶会」懸け釜
趣向凝らした江戸の粋
中国茶のもてなしも
名古屋城茶席の活性化の立役者、表千家流の岡江智子さんが2023年9月17日、愛知県稲沢市の国府宮神社の月釜「三笑茶会(さんしょうちゃかい)」に釜を懸けました。エアコンなしの茶室で"残酷暑"もなんの、表千家流の侘び茶を踏まえ、粋な趣向でもてなしの一服を振る舞いました。
席主の篤い心入れでしょう。エアコンがばっちりきいた寄付では、茶客に菊花茶など中国茶2煎のもてなしもありました。
三笑茶会の会場は、境内茶室の三笑亭(さんしょうてい)。松尾流第10代不染斎の設計により1954年に開設。三面大黒の画像が社宝としてあること事から宗匠が「三笑亭」と名付けたそうです。床柱は神苑の藪椿、床縁は神社の古材を使用しております。障子腰張の内側は蒲の網代組。欄間は桂離宮笑意軒の窓に因んだ丸窓を配し、軒は檜皮葺の穏かな円みをおびた屋根となっており、数寄屋らしい軽快さが特徴です。
ただ、「地球灼熱化」の時代、9月後半になっても日中の蒸し暑さは盛夏と変わらず。窓や建具を開け放っても茶室内は蒸し風呂状態。数台の扇風機がフル稼働で熱風を掻き回していました。
風炉の炭火の前に座って点前する方の暑さはいかばかりか。その傍らには珍しく温度計付きの扇風機があり、そのデジタル表示は「34」。ふうう、熱いわけです。
席主は「これも修行です」とにっこり。すごい、精神力です。
床の画賛に映る茶花は、ススキに女郎花、吾亦紅、花トラノオ、竜胆の5種生け。ここだけは、涼しげな秋風が吹いていました。天龍寺青磁、雁行する雁を描いた古萩、粉引手の高麗茶碗など、席主心いれの茶器が展観、あるいは席使いされました。
会記にはありませんでしたが、次の間の床に掛けられた名古屋の復古大和絵の画家、日比野圭文描く盃を重ねてほろ酔い加減のお公家さんの姿が、微笑ましく、しばし見とれました。
岡江さんは、名古屋城内茶席を活用し毎月第1日曜日に開く月例茶会(月釜)「金城茶会」と、その特別版「三英傑茶会」を主催する金城会の世話人。懐石でも定評があり、名古屋市南区の自宅茶室「嘯庵」で定期的に茶事を主宰しています。
「国府宮はだか祭」で知られる国府宮神社の茶席では、三流(松尾流・表千家・裏千家)が月毎の交代にて、三笑亭で一席の釜がかけられます。当日券は、初釜が2,500円、月毎の三笑茶会は1,000円。10月22日は「秋の茶会」が開かれ、松尾流(中村宗暉さん)、表千家(谷口剛久さん)、裏千家(大島宗立さん)の3席。会費は3000円です。