見る・遊ぶ

見る・遊ぶ

伝空海筆の名宝 破格の格調
漏れなく土産「一字一石経」
服部清人さんトーク好調
茶美会大茶会 番茶席編

IMG_0296.JPG

弘法大師空海は、日本書道史上、屈指の書の達人としても知られます。大師御誕生1250年記念の茶美会第2回大茶会は、仏教を民衆に広めた空海の事跡への敬仰とともに、能書家空海へのオマージュが随所に込められていました。薄茶席の待合に飾られた大小の竹筆(松原立雄さん作)はその一つです。宗教家・能書家空海への讃仰を最も打ち出したのは、番茶席でした。席主の「ぎゃらり壺中天」店主の服部清人さんは、書家として活躍。「空海といえば、書でしょう」と、床に掛けたのは、古経の名宝として知られる伝空海筆の「隅寺心経(すみでら・しんぎょう)」でした。

古信楽の蹲(うずくまる)の掛け花入に、森の貴婦人と称される大玉の大山蓮華、庭藤を添えて、投げ入れ。脇床には華麗な蒔絵の硯箱を飾り、まさに濃茶級の室礼。破格の格調でした。

4883328508352142708.d7e96c3fe158461ea93a31526b523e66.23051707.jpg
番茶席は、東京・根津美術館の「大師会」のような大茶会であっても、粗末な茶屋でほうじ茶とおかきが出る程度。よく言っても、"箸休め"の扱いです。しかし、席主の個性を重視する茶美会大茶会においては、番茶席は異彩を放つ存在です。茶道の規矩にこだわる必要もなく、従ってお点前も省いてもよし。席主の心入れの室礼、トークと共に、民衆の茶・菓でもてなすことが、求められています。

4883328508352142708.b7c1c38421cf481ba27eff60729e8995.23051707.jpg
仏の教えの核心『般若経』のエッセンスを262文字に集約した般若心経。謹厳な筆致で書かれた隅寺心経は、日本最古級の般若心経の写経とされます。服部さんは「弘法大師・空海の筆跡と伝えられますが、あくまで伝承。だからといって、価値がないどころか、その書風から空海が生きた時代からさらにさかぼる、希少な天平経と推定されます。空海が奈良の隅寺(海龍王寺)によく通ったことと、江戸時代に同寺から多数の般若心経が出たことからの言い伝えです‥」と、立板に水の解説。

4883328508352142708.508b4d67f3da47e9985f1d2db16ab87e.23051707.jpg

茶は、土佐山中で栽培、生産される珍しい後発酵茶「碁石茶」。空海が製法を伝えたという伝承があります。

お客は、土佐銘菓の「梅不し」とともに賞味しながら、服部さんのトークに耳を傾けます。
一時は、八畳の茶室は服部さんを扇の要に人垣が幾重にも出来るほど。大賑わいでした。

「難民船のようでした」と服部さんは苦笑い。
湯呑みは、「壷中天Cha友の会」次の各作陶家の作品が供されました。角岡秀行、笹山芳人、水越美智子、加藤真美、安藤千都勢、野田里美、宇佐美直子、ミノワタカハルの各氏です。

4883328508352142708.bfcc48d3ad454bb291f3dabe6552fdf8.23051707.jpg
なんと、お土産付き。茶美会大茶会の前日、興正寺の護摩祈祷を受けた、霊験あらたかな「一字一石経」のお守りです。壺中天主人が経典を一字ずつ小石に書写。大師伝説にちなんでの篤いもてなしです。「名宝を拝んで、一字一石経もいただけた。大師の功徳に預かった気分です」。そう喜ぶお客様が大勢いました。

本茶会では、薄茶・番茶・ライブ・回廊装飾が楽しめる「お気軽券」(前売り1,500円)を販売しました。「敷居は低く、格調は高く」の茶美会大茶会のコンセプトがよく表れた番茶席でした。

4883328508352142708.4d807970386247608a1b99940741b778.23051707.jpg

4883328508352142708.e86c939c56714c979986ff30ecdca9f7.23051707.jpg

次は、茶席や香席を結ぶ普門園回廊を彩った空間演出・いけばなを紹介します。