「菖蒲香」名花を探す
志野流松隠軒が組香
茶美会大茶会 香席編
「いずれ菖蒲か杜若」。どれも美しく甲乙つけ難い、慣用句です。この慣用句のもとになったとされる伝説の武将歌人・源頼政の艶話を主題にした組香「菖蒲香」が、茶美会第2回大茶会の志野流香道による「香席」で行われました。
時は平安時代末期。武勲の誉高い頼政は宮廷に仕える絶世の美女「菖蒲前」に一目惚れしました。これを知った鳥羽院は一計を案じて、菖蒲前と年齢、容姿がよく似た女性を集め、同じ装束を着けて並ばせた美女3人の中から菖蒲前を探し当てよ、と命じます。歌人として名高い頼政は「五月雨に池のまこもの水ましていづれあやめと引きぞわづらふ」と詠んで、機転の返歌。歌の功徳をもって、菖蒲前を妻に迎えたという故事がテーマの香りの遊びです。
菖蒲香は、1種類の香を聞いて何番目にその香が出たかを当てます。まず5種類の香木を香包に包んで用意し、1種類だけを試し聞きで覚えるところからスタート。その後、包んだ全ての香をうち混ぜて無作為の順番で香を焚きます。5種の香を聞き、最後に記録用紙に、試し聞きした香が何番目に出たかを紙に書いて、当たり外れを競います。
組香は王朝時代の文学、故事と結び付いて、優雅な世界に誘います。八事山興正寺の会場となった茶室耕雲亭を香席に充て、蜂谷宗玄家元の直門と蜂谷宗苾若宗匠の弟子による志野流松隠軒が担当しました。濃茶、薄茶席を伴う本格的な茶会で、組香席が設けられることはまれで、同じ日に伝統文化を併せて味わうことができたと、来場者からは好評でした。
次回は、大いに話題をさらった番茶席を紹介します。