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「福聚海無量」傑僧みなぎる気迫
谷口宗久さん熟練の点前 美しい鱗灰に茶家の伝統
茶美会大茶会 濃茶席編

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名古屋・八事山興正寺で2023年5月14日開かれたNPO法人茶美会日本文化協会主催の「弘法大師御誕生1250年記念 茶美会(さびえ)第2回大茶会」。メインの濃茶席、今回は表千家谷口宗久さんが担当しました。広大な境内の茶室群のうち、書院の竹翠亭が会場です。

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 寄付には、復古大和絵の絵師、森高雅画の「薬玉の絵」がかかり、炭道具一式のほか、古信楽の茶入、銘「黄菊」、主茶碗の古はぎの銘「老松」、江戸初期の武家茶人、一尾伊織の茶杓、銘「白鹿」が飾られました。

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 本席の床は、慈雲筆の一行「福聚海無量」。観世音菩薩の福徳が広大無量であることを、海にたとえた仏語です。弘法大師が広めた真言密教を修めた慈雲は「慈雲尊者」と尊称される江戸時代の傑僧です。当時の仏教界を打破して、釈迦在世のときに原点回帰することを希求しました。堂々たる墨痕に、尊者のみなぎる気迫が感じられます。真言宗の僧侶であった慈雲尊者の一行は、大師御誕生記念の本茶会にふさわしい墨蹟と拝見しました。古銅四方の花入に投げ入れた大山蓮華と相まって、床の間は無駄をいっさい削ぎ落とした高い格調。

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 亭主自ら濃茶を練る姿は、祖父の代から続く茶家に生まれ育ち、茶道に傾倒する谷口宗匠の境地を映しているようでした。さらさらと濃茶を練っているようで、過不足なく茶が香り立って、さすがの熟練です。

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表千家流の初風炉は、真塗の土風炉に鱗灰。撒かれた鱗形の灰の丹精。細部を揺るがせにしない茶家の伝統を感じました。涼しげな菓子は銘「青嵐」。

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次回は、有楽流拾穂園の薄茶席編です。