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「茶甘ポン」で新名所お披露目
ARTX社が「犬山スイーツガーデン」
如春庵森川家の所有地を再開発

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「茶歌ポン」ならぬ「茶甘ポン」。国宝犬山城を仰ぐ犬山城下町の本町通り(愛知県犬山市)に、スイーツ専門店が集まる「犬山スイーツガーデン」が完成し、その披露セレモニーが2023年4月18日にありました。中京を代表する茶人、如春庵(じょしゅんあん、にょしゅんあんとも呼ぶ)森川勘一郎(1887-1980年)が出た森川家の所有地を、同家から依頼を受けた株式会社ARTX(アルテクス)・アソシエイツが再開発しました。

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 埜本修さん率いるARTX社の関連団体は、山梨・八ヶ岳山麓の身曽岐神社で毎年夏、一流能楽師が競演する「八ヶ岳薪能」を企画、開催しており、竣工披露のセレモニーで城下町にふさわしいイベント企画のソフト力もアピールしました。

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 切り火によって邪気を祓う古神道の火打ち石の儀が行われたあと、能楽シテ方宝生流の重鎮、辰巳満次郎さんが登場。江戸初期の能面、豪華な本衣装を着けて能「西王母」のハイライトを、大鼓、小鼓、地謡の伴奏で舞いました。
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IMG_0013.JPG 祝いの式で能楽師が仕舞を舞うことはありますが、常は紋付き袴の略装。しかしこの日は、とびきりの装束で、しかもお囃子付き。本装束、面付けの舞囃子は、能舞台でも見ない豪華版で、目を見張りました。続いて尺八琴古流の善養寺恵介さんがソロ演奏。第68回 芸術選奨文部科学大臣賞を受賞した名手です。能「石橋」をテーマにした尺八曲「獅子」で、スイーツガーデの飛躍を祝いました。
 最後は、地謡抜きで能管一管ならぬ、尺八独奏で舞う創作能舞「西王母」で締めました。空を切り裂くような甲高い能管とは異なり、深々とした竹の響きにのせて舞う舞囃子は新鮮で、味わい深いものがありました。これほど重厚かつ濃密な完成セレモニーを企画、開催できるプロデュース力、人脈は貴重です。

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 ちなみに、西王母をテーマにしたのは、犬山祭の車山「西王母」にちなんだもので、不老不死の桃を育てる女神西王母が皇帝に桃の花と実を献上して、国家安寧を祈る内容です。

 敷地は、如春庵の跡継ぎ、森川家当主に嫁いだ故森川覚子さんの生家跡。城下町の町屋が数軒分もある広い敷地の半分ほどが駐車場になっていたのを、ARTX社が再開発しました。

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 敷地内には建物が4棟あり、チョコレート店など14店舗が営業。今後も新たな店が入居予定といいいます。わらび餅、チュロス、ベビーカステラ、バナナジュース、バナナジュース、写真シールや占いの店もあります。22日には同じ敷地内に、飲食スペースを備え、かき氷などを販売する「犬山ガーデンプレイス」がオープン。スイーツガーデンで購入した商品もその場で食べられるそうです。

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 セレモニーには、原欣伸(よしのぶ)犬山市長や河村たかし名古屋市長らが招かれ、犬山城下町の新名所誕生を祝いました。
 犬山スイーツガーデンの前身の町家で生まれ森川覚子さんは、来春の完成を目指して覚王山日泰寺内に再建中の森川邸田舎家の復元を念願していました。存命中は果たせず、先年他界しました。WEB茶美会編集長の長谷義隆は、死後不遇だった如春庵の再評価に先鞭を付けて、顕彰機運を盛り上げるのに一役買いました。森川家には足繁く通い、森川さんの信頼を得て、尾州久田流の先代家元下村瑞晃さんと如春庵顕彰の茶会を2度プロデュース。これが機縁になって、名古屋城天守閣から門外不出になっていた森川コレクションは名古屋市博物館に移管され、その真価が世に広く知られ、如春庵の評価は一気に高まりました。

 如春庵は10代から古美術目利きの才を現し、本阿弥光悦の名碗、赤楽「乙御前」、黒楽「時雨」を手中にし、益田鈍翁と親しく交わり、のちに国宝、重要文化財となる古美術を数々掘り出し「中京の麒麟児」と呼ばれた近代茶人の一人です。

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