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有終の「プチジブリ茶会」
小トトロ!高取友仙窟さん 城山八幡宮献茶会の師走煎茶

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 茶どころ名古屋の師走を締めくくる城山八幡宮献茶会の月釜が2022年12月23日、名古屋市千種区城山町、城山八幡宮の茶室「洗心軒」でありました。京都・詩仙堂をイメージした2階煎茶室では、賣茶流家元の高取友仙窟さんが、愛・地球博公園に11月開園したジブリパークにちなみ「プチジブリ煎茶会」の趣向で客を楽しませました。

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 賣茶流は、江戸後期の八橋売茶翁の煎茶道の流れを汲み、大正初年に初代髙取友仙窟が名古屋で創流106年の一派。 「優雅と格調と楽しい」を掲げる創設105年の名流。当代は4代友仙窟さんは「優雅、格調、楽しい」をモットーに、音声配信アプリstand.fmに自身のチャンネル「家元の与太話」を開局するなど、煎茶普及にアイデアを絞っています。

 会場は、煎茶と茶道を同時に楽しんだ明治期の豪商が建てた代表的な数寄屋建築で、関東大震災で被災した益田鈍翁が難を逃れ1年余り逗留して、名古屋の数寄茶人たちと茶の湯に耽った遺構です。

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 高取さんは今回のテーマは、年の瀬に新年の希望を与祝する「再生」だとか。ジブリも隠し味になっています。
 床の間の軸は、高山の漆工芸師、久世尚可さんの蒔絵「叫び」。叫ぶ人の姿をシンプルかつ、大胆に描いた禅味のある作です。家元曰く「年の瀬ともなれば、年越しの金がないって。叫ぶでしょ。戦争、物価高だとか、色々叫びたいことがあるでょう」。挿し花は、難を転じる南天にランを添えて。脇床には、金運を呼ぶ金柑が鈴なりの盆栽を置いて。

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 菓子器に、今回のもう一つの趣向があるのだとか。ぶち割れを金繕いした鉢。宗匠は最初は「イタイ茶会」にすべく、道具組みしたそうです。そのシンボルが、ぶち割れ主菓子器。「茶会先に発送、開けたら私の荷造りの仕方が悪くて割れてました。3万円で買ったのが、金繕いに10何万円もかかって、イタかった」。うう、若者言葉のイタイって、そんな意味でしたっけ。

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 さて、点前座を目に移せば、アニメっぽいのキャラクターをプリントした敷物に銀瓶、盆を置いて瓶掛け盆点ての構え。中国古代青銅器写しの青磁瓶掛けに、古風なデザインの銀製のやかんが載っています。やはり中国古代青銅器のデザインを汲んだ三代秦蔵六製です。髙取さんは「この銀瓶、ゴツいんで、あまり好きではなかったんですが、数年前、阪急百貨店で売値を見たら、ベンツが買えるほどの値が付いていて、びっくり。中国人が買い漁って、もっと高値になっているんですよ、この手が。で、うちにもないかと探したら、あった、あった」。ちょっとチープなアニメTシャツの敷き物、略式の盆点てに、ベンツ級の超高値の銀瓶を取り合わせる。「なんとも奇想天外な」。と叫びたくなるのをぐっと我慢して、点茶を待ちました。


 菓子に、今回のもう一つの趣向があるのだとか。ぶち割れ鉢に、真っ黒なまんじゅうみたいな菓子が盛ってありました。「これ。分かりますか」と家元。「銘は、すすわたり」。ハハン。「となりのトトロの、まっくろくろすけですよね」「おお、よくわかりましたね」「おや、食べたら、ちょっと煤っぽい味が。隠し味に燻しを入れたんですか」「ええ、そんなつもりはないけど、、」。主客のやり取りに、会衆からクスクス笑い声が漏れます。
 「はて、あとはどこがジブリなんですか」「ほれ、点前座の打ち敷。二ノ国のキャラクター入りのTシャツを敷物に仕立てました」「ほほおうっ?」。

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 「で、ほかは」「もうありません」。「えっ、そんだけ」と、しばし絶句。しかし、もう一つ、キャラクターを見つけました。「トトロですよ。宗匠、失礼ながら、ちょっとトトロに似ていませんか。小トトロってことで」「おいおい」。居並ぶ売茶流門人は、宗匠の手前、爆笑するわけにはいかず、くすくす忍び笑い。「小トトロって、言い得て妙」と囁きが。「これで、トトロ煎茶会、三拍子揃いました」

 高取宗匠、このごろネットの音声配信アプリstand.fmで煎茶を軽妙なやり取りで紹介する「家元の与太話」を開設。自称与太話を定期的に発信しております。開局早々の頃、実は私に対して「お茶のアブナイ話を暴露して」と出演を頼む電話が入りました。その手は桑名の焼き蛤。やんわりお断りしたいきさつがありました。

 「まだ、チャンネル登録数が200なんで。社中に頼んでも、登録してくれない人もいて」と愚痴がポロリ。「登録が千を超すちお金が入ってくる、ぜひ登録を」。おっ、茶会もどんじり、お願いの叫びで締めくくりました。
 印刷して配った茶会記には、ネット解説のページに飛ぶ、QRコードが付いてました。チャンネル登録数を伸ばす算段とお見受けしました。お茶目で、なかなかに抜け目ない高取宗匠です。

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 同時開催は、表千家村瀬宗又さんの薄茶席でしたが、時間がなく参席できず。失礼ながら、割愛いたします。

 次回は新年1月23日(月)、売茶流の煎茶「拝服席」「協賛席」と点心付き。当日一般は4,500円。2月以降、夏季、別会を除く毎月23日の月釜は、茶席2席で当日券1,800円。年会費は入会金2,000円、年会費9,000円。問い合わせは城山八幡宮献茶会=電話052(751)0788=へ。