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郷土ゆかり茶人兄弟を敬慕
西山宗公さん松平郷から参上
豊国さん記念館師走釜

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 名古屋市中村区の中村公園内の公共茶室2会場で2022年12月18日に開かれた豊国神社顕彰会の師走釜。もう一席は書院建築の記念館で開催されました。裏千家の三河地区のベテラン、西山宗公さんが薄茶席を担当しました。

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 「豊田の山奥、松平郷からきました」。西山さんは豊田市童子苑の月釜の常連席主を務めるなど、地元茶道界を牽引するベテランです。「頼まれたのを光栄と思って、名古屋に出てきました」と語ります。
 松平郷は、大河ドラマで注目の徳川家康の祖先、松平氏発祥の地。程近くに奥殿藩陣屋を構えた松平氏の一族、大給松平家に生まれた茶人兄弟がいます。江戸後期から明治期に生きた渡辺規綱(又日庵=ゆうじつあん)と、裏千家11代玄々斎宗室(げんげんさいそうしつ)です。尾張徳川家重臣・渡辺半蔵家、裏千家にそれぞれ養子に入り、とりわけ豊田、名古屋に縁が深い茶人として、当地の裏千家の茶会では欠かせない存在です。


 西山さんの、玄々斎・又日庵への敬慕も、名古屋の裏千家茶人にも負けず劣らぬものがありました。

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 寄付では、裏千家の嫡男として嘱望されながら17歳の若さで夭逝した一如斎と、父の玄々斎の合作の掛け軸をかけて、平棗は玄々斎の在判、茶杓は玄々斎の作、主茶碗は又日庵手造りの黒楽半筒茶碗、銘「木枯」。窯変したのか、青みがかった景色が一風変わって、味わい深い茶碗です。
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 玄々斎の書き入れのある茶杓の筒がユニークなこと。籠地。籐で組んだ雅味ある籠地の筒で内側を和紙を貼り漆を塗り仕上げておりました。筒が籠地の茶杓は、初めて接しました。銘も「慎(つつしみ)の世の中」と変わっています。

 西山さんは「今あれでしょ。物価も上がって、将来も不安だらけ。世間は慎みの世の中でしょ」と。なるほどの、銘です。

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 さて、本席の掛け軸は、13代円能斎宗室の一行「本来無一物」。円能斎の時代、今日庵は家元邸が人手に渡る寸前まで衰微。どん底から盛り返した歴史を思いをいたすと、筆の巧拙を超えて、説得力のある書です。花は白嶺(はくれい)椿に、ビナンカズラの枝と実。木瓜口の伊賀耳付花入は、小ぶりながら堂々。席主曰く「桃山時代までは行きませんが、江戸前期ごろでしょうか。(千家中職の中川)浄益の旧蔵で浄益がそっくり写した唐金の花入が添っています」。

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 裏千家の流風を受け継ぎながら、数寄者好みの時候を得た寂び道具を適材適所に配置して、奥行きのある道具組みでした。
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 歳末の餅つきを連想させる、李朝の餅型の蓋置、飄逸な人物を描いた古染付の香合、トロトロの時代の行李蓋の煙草盆、天龍寺青磁の菓子器などです。年の瀬の托鉢行を想起させる鉄鉢の火入も年代物でした。

 障子一枚で隔てた水屋は、物音一つ聞こえず、点前をしたお弟子さんはもとより、お運びの門人たちの姿勢、所作も美しく、西山先生の指導よろしきを得ている感がありました。

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 次回、年明け1月29日(日)は、裏千家の森宗美さんが桐蔭席で濃茶の続き薄茶を担当します。当日券は2,500円。年会費は12,000円です。
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