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桃庵クリスマス茶会大盛況
加藤おりはさん・三宅宗完さん2人亭主
幻想空間に浮かぶダリ
みぞれが雪に聖夜の趣向

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 名古屋中心部の交通至便な5階建てビル内にある茶室「桃庵(ももあん)」で、師走入りした2022年12月4日、流派を超えた二人亭主によるクリスマス茶会が開かれました。朝9時半から9回入れ替えで行われた茶会は全て満席、地元はもとより東京など各地からお茶好きが集まり、終日にぎわいました。

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 亭主をしたのは、桃庵主で有楽流の加藤おりはさん。本業はスペイン舞踊家、WEB茶美会では「お茶目さん」のキャラクターで探訪記を書いています。もう一人は、一人旅の旅先で茶籠の野点茶を楽しむアウトドア茶道家、松尾流の三宅宗完さん。茶どころ名古屋注目の若手個性派2人の茶会はいかに。

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 エレベーターで桃庵のあるフロアに降り立って扉を開けると、最初に目に飛び込んできたのは水墨の聖母子像でした。優しい線で愛し子イエスを抱いて微笑みを浮かべるマリアを描く聖母子図です。加藤さんの茶友、水墨画家の福田泰古さんが、この日のために描いた新作です。

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 受付を済ますと、普段はダンススタジオを模様替えした寄付へ。明かりを落とし、蝋燭がゆらめく神秘の空間になっていました。天井に投影されたプロジェクションマッピングの映像から、寄付に仮想の雪が降りかかります。クリスマスツリーなど大物、小物の飾り付けがあちこちにあり、見どころたっぷりです。腰掛けて、白湯をいただいているうち、ゆらめく電飾に浮かぶ額装の絵が目に入りました。近づくと、磔刑のイエスのもとで佇むマリアがいる大カテドラルの中空に、騎乗した勇士が駆ける。なんとも大胆な構図です。サインを見ると、なんとシュールレアリスムの巨匠サルバトール・ダリ。自筆鉛筆サインがあるリトグラフでした。まさか、ここでダリに会えるとは。思わず、唸りました。

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 茶室に入ると、第2寄付ともいうべき次の間の壁床には「ネウマ譜」が。三宅さんによると「16世紀、羊皮紙にイカ墨で書かれた聖歌の一節」とのこと。本席は江戸後期の旗本茶人岡田雪台筆の「雪 云々」の縦もの。寄付に飾られた、有楽流武家茶人山本道伝作の茶杓、銘「みぞれ」に呼応して、昼間降っていたみぞれが夜半には雪になる、聖夜の時の流れが感じられる取り合わせでした。

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 花は、聖書の一節がプリントされた白釉の大徳利(内田鋼一作)に、ヒイラギの黄葉に南天の朱の実がクリスマスらしく、中京名椿の関戸太郎庵が投げ入れてありました。

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 亭主特注の主菓子「聖樹」を盛った印版伊万里の皿も絵付けも星形。天使が舞う華やかな見立ての香合、聖餅器南蛮蒔絵写しの茶器、銘「もろびと」の席使いの茶杓など、随所にクリスマスのシンボルが散りばめられていました。

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 加藤さんのたおやかな流れるような有楽流の点前で、お茶が点てられました。一服いただいて、苦味と甘味が程よくブレンドされた鮮烈な味わいの薄茶でした。三宅さんお気に入りの豊田市の茶舗製だそうです。会記にあると思って、聞き流したのが間違い。あらら、書き漏れていました。
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 受付、水屋は中京大学(名古屋市)文化会茶道部の面々。三宅さんが指導する若者たちが、静かに、きびきびと茶会を支える姿が好ましかったです。

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