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卒寿の席主デビュー 裏千家成瀬宗伸さん
師走の豊国神社月釜
裏千家荒川宗純さんは「義士釜」

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 卒寿(数え90歳)を迎えた裏千家成瀬宗伸さんが「生まれて初めてで最後の月釜」を担当し、2021年12月19日、名古屋・中村公園内の公共茶室「記念館」で開かれた豊国神社献茶会で遅咲きの席主デビューを果たしました。長い歴史を刻む茶どころ名古屋の月釜で、卒寿の初席主は初めてかもしれません。

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 かの大名物「日野肩衝」を所持した公家茶人、唯心院日野輝資あての千宗旦筆の12月20日付消息を本席に、長い茶道人生で出会った茶器を取り合わせ、侘び茶本流をゆく茶会となりました。「この掛け軸が世に出たい、世に出たい、と言うの」「この軸があるばっかりに、こんな歳末の月釜を引き受けてしまって」‥。

 とはいえ、この日に向け、なみなみならぬ準備をしたようで、体調を整えるため好きな茶会への外出を控えて、万全を期した様子が言葉の端々に伺え、胸が熱くなりました。

「今は気が張っているけど、終わったらどうなるかしら」「わたしは年に不足はないの。もうこれで思い残すことがない」。茶人の本懐を遂げた言葉が印象的でした。

 卒寿自祝の思いを込めた一目瞭然の茶器はなく、時候を得た取り合わせの品々が好ましく。無学和尚の手造り赤楽茶碗や、平澤九朗の珍しい乾山写し茶碗など、茶数寄が喜びそうな珍品もさらっと取り混ぜて、遊び心と感謝の思いがよく伝わってきました。

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 一方、荒川宗純さんは広間席「桐蔭」で懸け釜。12月14日に武士の本懐を遂げた赤穂浪士の討ち入りに因む「義士茶会」の趣向です。近年「忠臣蔵」はテレビも映画も舞台も上演がめっきり減りましたが、茶会ではどっこい、師走の定番。

 荒川さんは、俳人でもあった義士・大高源吾の「宝舟」画賛に始まり、翠巌筆の堂々たる横もの「勧懲」、大業を成す「染付ナス香合」などさんざんに悪を懲らしめる、こりに凝った義士讃歌の趣向で茶客を喜ばせました。

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 次回は1月16日(日)。裏千家庄司宗文さんが「濃茶・つづき薄茶」を担当。当日券(3000円)あり。