見る・遊ぶ

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美濃桃山陶の名品づくし
桑山左近さんの木曜会茶会 大盤振る舞いの添え釜も

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織豊時代の名工、丈八が作ったとみられる美濃桃山陶の織部沓茶碗と美濃伊賀水指が一挙に登場し、古田織部が選んだ名工「瀬戸十作」の名品が茶席を席巻しました。
茶どころ名古屋屈指の茶器収集家にして茶博士の桑山左近さんが2021年10月7日、名古屋・上飯田の茶懐石志ら玉で開いた木曜会神無月茶会。岐阜県恵那市出身の桑山さんは、所有する茶器コレクションから、郷里美濃ゆかりの茶器を重点に名品、優品づくしの室礼で、コロナ禍宣言明けで今年一番の茶客で賑わった木曜会を、大いに盛り上げました。

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美濃伊賀は、美濃でつくられた伊賀焼風のやきものです。織部好みの豪快な筒井伊賀の作意を汲みつつも、造形が本歌の筒井伊賀と比べてちょっとひ弱、躍動感がいまいちの物が多いのですが、この日登場した美濃伊賀水指は、伊賀焼に勝るとも劣らぬ力強さです。三角形の胴の底を州浜形の窪ませて三足を付け、上部を円筒形に仕上げた力感みなぎる造形です。大胆、無造作に付けた耳も茶味があります。

底には「イ」印の丈八のヘラ彫りの記号があるそうです。織豊時代の名工、丈八のヘラ銘として知られます。


もう一つの、「イ」印の丈八作は、織部沓茶碗です。織部の沓茶碗は懐石に使う向付が後世、茶碗に見立てられた浅目のものが多いのですが、この茶碗は深くもとより茶碗出来。見込みの茶だまりもしっかりあり、引き締まった高台にはくっきり「イ」印、口縁に2カ所金直しがありましたが、織部茶碗としては傷けが少なく、滅多に出くわさない優品と見ました。
丈八の名品二つに一度に直に拝見する機会は今後、2度とあるのでしょうか。そんな至福の一会でした。
もちろん、その他の道具も茶博士ならでは、一つひとつ吟味された、取り合わせです。会記と写真をご覧あれ。

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重菓子は、恵那山の秋を詩情豊かに表現した恵那川上屋製の銘「山化粧」です。黄瀬戸の菊皿に盛られて、名残の茶趣がいやまします。
同店は地場産の契約農家の恵那クリだけで作った特注品だとか。驚いたことに、主菓子、干菓子の栗三盆とも恵那川上屋の提供品なんだそうです。

そういえば、なんだか、この日の木曜会はいつもと様子が違ってました。
会場の志ら玉さん玄関間に、大作の絵画がデーン。茶席に向かう通路にも、見慣れぬ絵画や絵軸が掛かっていて、どうも全館、作品展のような趣きです。聞けば、栗きんとんの名店「恵那川上屋」が木曜会とタイアップ。恵那川上屋の社長は昨年長逝した愛知県出身、スイス在住の画家横井照子さんの画業を長年、応援し、店舗横に作品美術館「ひなげし美術館」を開設するほど。

その画業をゆかりの名古屋で初紹介すべく、名古屋・池下の古川美術館分館ため三郎記念館で回顧展を開くとともに、この日、木曜会の茶客向けに特別な1日展を開いてくれました。奇特なことです。

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2階広間に個展会場を設け、来場者に漏れなく栗きんとんをお土産に無償で配りました。それも6個入りです。茶客は目も舌も潤い、しかもお土産付きに二度びっくりです。

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さらに、恵那川上屋が提供した添え釜まで、別室茶室であり、志ら玉社長で花道家の柴山宗平さんが席主となって、薄茶を振る舞いました。茶箱にちなんだ、瓶掛け・略盆点前の大侘びの趣向。
会員はもとより、当日会員券1,500円で茶席2席と個展鑑賞、さらに銘菓6個入りのお土産付き。目も舌も大満足の思わぬ大盤振る舞いのサプライズ茶会に、茶客は喜色満面でした。

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