味わう

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拾穂園日乗 〜良弁椿咲く〜 紅白"墨流し"慎ましげ

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あおによし奈良の都の「大仏さん」東大寺を開山した良弁(ろうべん)僧正。奈良時代を代表する高僧が植えたと伝わる「糊こぼし椿」。別名「良弁椿」がやっと開花しました。例年なら、東大寺二月堂の修二会「お水取り」が行われる三月上旬には咲き出すところ、このとこの寒さで今年は開花が半月以上遅れました。

拾穂園に咲く良弁椿糊は、東大寺開山堂の基壇脇にある原木から切り花して、その枝を挿木して育てたもの。まじりっけなしの良弁椿です。

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お水取りで使われる造花、さらにそれを模した奈良銘菓「糊こぼし」の、花弁を紅白に染め分けたシンプルなイメージが強いのですが、原木は紅に白の斑入りの加減がとても繊細です。花弁は真紅の海に白液をわずかに"墨流し"したよう。全体に細かな皺があり、微妙な花の襞(ひだ)が色合いに深みをもたらしています。花芯は茶筅(ちゃせん)のよう。茶人にはうれしい自然の造形です。

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形といい、斑入りの加減と言い、なんともいえない気品があります。紅白の斑入り具合を競う園芸種が数多くありますが、やはり品位は群を抜いています。
お茶では、花は今にも咲かんとする蕾をことのほか愛でますが、良弁椿はやはり咲いてみないと、その良さが分かりません。

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庭のひと元から、咲きかけと満開の二枝を切って、青磁の徳利と真塗の矢筈(やはず)板に取り合わせてみました。