味わう

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拾穂日乗〜椿「微笑」可憐な表情〜
災厄続きの正月に笑み

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伊予(愛媛県)の5大椿の一つ「微笑(みしょう)」が咲きました。
先年亡くなった茶友が挿し木で育てた苗をもらい、花が咲くのを待っていた一本です。昨季、もう一つの苗が5年目にして初咲き。今季、もう一つの苗からも、笑みがこぼれました。
一重咲きのワビスケ系の椿で、薄桃色地に白や濃い紅のぼかしが入ります。微笑とは、よく名付けたものです。言葉を用いずに心から心へと伝える妙境「拈華微笑(ねんげみしょう」からとった、いかにも名は体を表す含蓄あるネーミングです。

 元日早々に能登を襲った大地震と津波、そして被災地支援に飛び立とうとした海上保安庁機と日航機との衝突炎上事故。胸塞がれる思いの災厄で始まった年明けの朝、微笑の蕾がほころび、なんとも可憐でけなげな花の姿を見せてくれました。

原木は、愛媛県四国中央市の旧家奥庭にあった樹齢250年の大椿。戦後まで門外不出とされ、
原木が枯死する前に、多くの枝が持ち出され、好事家の間で育てられたそうです。
ちなみに伊予の5大椿とは、微笑、篤山ツバキ、酒天童子、与市、伊予紅をいうのだそうです。

椿をこよなく愛した亡友の命日がもうじき。いつもなら、枝を切って、茶席に飾るところですが、

今年はそのまま愛でましょう。