味わう

味わう

一器・一花・一菓
〜稽古納めの白侘助〜
「無事是貴人」と3種生け
引き際鮮やか断捨離の人思う

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 花の姿は控えめながら、純白に芯の強さを感じる椿、白侘助(しろわびすけ)。待望の初咲きです。今年の稽古納め、竹の尺八花入に投げ入れました。本年もめでたくまもなく千穐楽。出雲大社藪椿と紅白椿のめでたき2種生けをと思っていましたが、実際に入れてみると、少し物足りなさが。ツヤツヤした緑の葉に朱の実が鮮やかなセンリョウを、付け加えてみました。

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 すると、真ん中の白侘助を軸に左右、上下に花葉の動きが出て、赤、緑、白のクリスマスカラーが揃うのも、ちょっと面白く。床の掛け軸「無事是貴人(ぶじこれきにん)」と映って、年の瀬気分が漂います。

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 茶席では年末、「無事是貴人(ぶじこれきにん)」の軸が好んで掛けられます。 禅語本来の意味とは違いますが、この一年間息災で暮らせた喜びと感謝の気持ちを込めて、この軸を掛けます。盲人演奏の名古屋系当道の伝統を守った老地歌箏曲家Mさんから、引退間際に「使ってちょうだい」と頂いた茶道具の一つです。

 次第に衰退してゆく名古屋系の地歌箏曲、胡弓をなんとか盛り上げようと、踏ん張ったMさん。会派の役員を辞めて、社中は解散、自宅も引き払って。引き際の見事さ、潔さ。「妹のところでお世話になる」と言ってから、連絡が途絶えて、はや5年。縁あって断捨離の拝受を受けたこの軸を見ると、Mさんの福寿を祈らずにおられません。