味わう

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一器・一花・一菓
〜関戸太郎庵椿と烏瓜〜
古三島の大徳利と命の呼応

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 尾張名古屋の名椿、関戸太郎庵が咲き初めました。錦秋も終わりがけ、拾穂園に育つ椿の中で、これまで最も早咲きだった西王母が、今年はなぜか蕾固く、うれしいことに薄紅色の椿の中で最も品格高い関戸太郎庵が今季さきがけ。葉が散りゆく物寂しい晩秋の風情を醸す照り葉(まんさく)と、真っ赤な烏瓜の実を添えてみました。

まんさくは、ものみな冬枯れの時期に真っ先に花を付ける木。照り葉をつけながら、枝の根元にははや芽が付いて、新たな生命力を感じさせます。

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 花入は、お茶の世界では古三島と呼ぶ李氏朝鮮初期の粉青沙器。15〜16世紀に焼成。奇跡的とも言える、完品の大徳利です。白化粧した肌に自由闊達に草葉を線刻し、無造作にも思える描きようは、現代のデザインにも通じる美的センスが感じられます。

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 もの寂しい晩秋に、植物の命と呼応する花入の線描。微妙に体を傾けた静かな造形と相まって、季節の動きを感じさせるようです。