味わう

味わう

一器・一花・一菓
手桶花入に朝顔
千代女の名句に寄せて

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 朝顔やつるべとられてもらひ水
加賀千代女の最も有名な句です。江戸中期の女性俳人ですね。季語は「朝顔」で秋。「朝、井戸の水を汲みに行くと、釣瓶の縄に朝顔の蔓が絡みついて美しい花を咲かせていた。水を汲むために蔓を切るのは忍びなく、近所から水をもらってきて間に合わせた」という様子を詠んでいます。
 今、拾穂園の庭は朝顔の盛り。同じ蔓から咲くのに、時期が移ると花の色が青から紫へと変化して、見飽きません。早朝切って、水揚げしても、すぐにしおれてしまうので、一計を案じました。


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 翌朝咲きそうな蕾が付いた蔓を長めに切って、前日から水を張った桶に浸けておくのです。これなら、ほぼ間違い無く花開いた朝顔が、花入に入れられます。

それでも、はや午前10時過ぎには萎みかけます。露地咲きも、やはり同時刻に萎みかけますから、いた仕方ありません。朝顔、という名の通りです。早起きのご馳走なのです。


 手桶の花入を選んだのは、冒頭の加賀千代女の名句に連想してのこと。釣瓶でももちろんいいのですが、一捻りしての手桶です。手桶は今ではお墓参りの時ぐらいしか使うことがないのですが、この溜塗の手桶は花入用に好まれたものなのでしょう。素朴ながら、どことなく洗練されています。実は、土蔵の中で埃をかぶっていたのを見つけて、初遣いしました。使われなくなった道具に命が吹き込まれたようで、ちょっとうれしさがありました。
擬宝珠(ぎぼうし)と萩を添えて。