味わう

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一器・一花・一菓
「光琳菊」咲き誇る乾山焼
重陽の節句に「秘すれば花」
9月18日は桃山志野を特集

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「〇(丸)」中に「・(点)」だけ描いて、菊花を象徴した「光琳菊」。極度に簡素化された菊の文様が、家蔵の乾山焼の角皿に色鮮やかに描かれています。9月9日の重陽の節句を前に、愛知県稲沢市の拾穂園で開いた茶会で、菓子器として席中に出しました。

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 尾形乾山は、寛文3(1663)年、京都の富裕な呉服商尾形宗謙(おがたそうけん)の三男として生まれました。兄は、画家の光琳です。兄光琳が派手好みであったのに対し、乾山は内省的、隠遁的な性格であったといわれています。
 

 
乾山の作品は、俗気のない、おおらかで文人的な洒脱さがあります。陶芸作品においては基本的には工房生産という態勢をとっていたようです。しかし、乾山の指導下で生まれた陶芸作品には、現代に通じる洗練された大胆なデザイン感覚とともに、乾山特有の芸術性、個性があふれています。乾山その人に接するような親しみが感じられます。
 

 この角皿は、目利きでならした稀代の数奇者が常什として手元に置いていた一点と、伝わっています。

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 秘すれば花。絵柄自の中に文字を隠し、その文字を見つけ出して詩歌を完成させる喜びや楽しみが、琳派の作品にはあります。菓子を賞味した後は、瀟洒な乾山焼を拝見しながら、光琳菊のお花畑に隠された文字を見つける知的ゲームに興じるお客も。

 とはいえ、この日の茶会で用いられ鑑賞された、数多くの茶器の一点にすぎません。茶会全体から見れば、初座の菓子器として登場して、その場限りで退場する、いわばチョイ役。美は細部に宿る、といいます。チョイ役とはいえ、おろそかにできません。茶会に奥行きと重しを与える重要な役どころなのです。

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 袴付、寄付、初座、後座と、複数の茶席を模様替えしながら、茶会全体が響き合う発見と感動のある茶の湯の可能性を探る企画を、拾穂園恒例の「四季の茶の湯」では毎回試行しております。さらに、茶事ともなれば、さらに各茶席ごとに造営した茶庭、外腰掛と、茶会は庭屋一如。聞香、懐石が加わります。

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 次回の「四季の茶の湯」中秋編は9月18日(祝)10時30分から(炭手前、濃茶、薄茶、茶器研究会)、14時00分から(濃茶、薄茶、茶器研究会)の2回入れ替え制。第18回茶器研究会の「桃山・江戸の華 茶陶お国巡り」は、本シリーズのハイライトとなる「古志野」を特集します。いうまでもなく、桃山時代の志野茶碗は国焼の最高峰とされるものです。個性豊かな茶碗、香合、向付、水指などを中心に、桃山、江戸初期の本流、江戸後期の復興志野、明治大正期、現代作家まで、さまざまな志野を展観し、時代の変遷による、違いも見比べて、審美の一助にしていただきます。
 お申し込みは、住所、氏名、連絡先を記入して、下記へメールへ。会費一般7,000円。午前満席、午後残席わずか。定員になり次第締め切ります。


sabiejapan2021@gmail.com