一器・一花・一菓
たっぷり濡らして花を
古備前の船徳利
土味と朴訥を愛でる
二晩、水にひたした古備前の船徳利。大甕から出して、木地の敷板に据えて、水が滴るまま、花をさっと投げ入れました。先月末開いた拾穂園四季の茶の湯。初座床の間を飾りました。
古備前研究家の識箱によると、桃山時代の古備前。◎の窯印が首のあたりにあります。
専門書やネットであたって見ると、この船徳利はなかなかの優品のようです。
船(舟)徳利は、揺れる船の中で使っても倒れないように、底が平たく広がっています。備前が特に名高く、ほかに唐津や丹波にもあるようです。漁師が沖へ出漁するときに酒を入れていたとか、船で醤油や酒などを入れて運ぶ器だとか。
家蔵の船徳利は、ある骨董商の店先で見つけたもの。備前焼の見どころとされる「緋襷」とか「桟切り」とか目立った窯変はないものの、てらいのない造形とねっとりした土味に惹かれました。よく使い込まれたのでしょう。撫でてみると、土肌も底もつるつる。手触りがいいのです。
7、8年前に一度使ったきり、しまったままになっていましたが、たっぷり濡らしたら、涼を呼ぶだろうだろう、と引っ張り出してきました。
釉薬を使わない焼き締め陶の備前焼。大地のぬくもりと、朴訥として鷹揚なたたずまい。惚れ直しました。
次回の拾穂園四季の茶の湯は7月29日(土)。同時開催の第16回茶器研究会「桃山・江戸の華 茶陶お国巡り」のテーマは「黄瀬戸」です。