いのち生動「真生流いけばな展」
4年ぶり大作競演
松坂屋名古屋店に延べ150点
明快、優美な造形のなかに、花々のいのちが躍動していましたー。真生流(しんせいりゅう)いけばな展〜希望の光・花〜が2023年4月14日、名古屋・栄の松坂屋名古屋店南館マツザカヤホールで17日まで4日間の会期で始まりました。名古屋では隔年ですが、コロナ禍でとんで4年ぶりの開催。とりわけ大作展示の合同席は、満を持しての競演。見ごたえ十分です。
「お花はいいわね」。観覧者のふと漏らした言葉。同感です。大きな会場は百花繚乱の芳しい香りが漂い、清新の気に満ちていました。
会場入って正面に据えられた合同席Cは、愛知県西尾市の伊藤紫苑さん、鈴木春翠さん、二宮裕甫さん、深海羽衣季さんの合作。うねるような流木と花器を巧みに組み合わせ、今を満開とときめく花水木を軸に、鉄線、若もみじ、牡丹など9種を生けて、陽春の気を大いに発していました。正面だけでなく、左右はもちろん、裏側から見ても見事な立体造形美。真生流の真骨頂です。
名古屋、尾張旭、瀬戸市などの門人花人8人の合作である合同席Bは、さらに大胆。広さ25平米はあるでしょうか、コーナーの一角に褐色の石を敷て、そこをキャンパスに見立て。青竹20数本でかたどった巨大な扇面に、枝垂桜、レンギョウ、小手鞠を配して、手前にヒリュウシダ、ソリダコ、宿根スイートピー、サンダーソニアなどを並べて、深山の厳かさと対照的な可憐な花園を、二つながら造形しました。名古屋では桜は散り果てを超えて葉桜。満開の桜をこの日に合わせて持たせる、その苦労はいかに。生きているお花を相手の立体造形の苦心のほどは、会場のあちこちで感じました。
山根由美家元の作品は、今を盛りに咲くピンクの石楠花の数々を芯に、木蓮の蕾から満開まで移り変わる花の諧調を左右に展開し、藤づるなどの枝ものの動きの面白さを添えて、明快優美。流風の体現者らしい気品ある作品と拝見しました。
山根奈津子副家元の作品は、一見煩雑にも見えますが、じっくり鑑賞すると一本いっぽんがゆるがせない、厳しく切り詰めた構成であることが分かります。自然の叢生の生命力と躍動に満ちた気韻。流風が受け継がれ、その中に個性が息づいていると感じました。
大作3点が頭上高くいけられた吊り花も、息を呑みます。空間の捉え方が、斬新です。
どうしても大作に目が行きがちですが、単独出品にも佳作がたくさんありました。名古屋市の脇田智香さんは、百瀬翠香さんらの作品です。
真生流は、昭和2年、自由花運動の先駆者、山根翠堂によって創流されました。型にはまったいけばなを廃し、線の美しさ、無駄を廃した研ぎ澄まされた造形、明快優美な作風を追求。一輪挿しからモダンなアレンジメントに至る幅広い作風、季節感あふれる自然の花の美しさを生かし、作者の心を込めた自由花を特色としています。本部道場は奈良市、本部は東京都にあります。
前期展は4月15日まで。後期展は16、17日。地元愛知勢はもとより関東、近畿、九州四国など各地から延べ150点を超える作品が出品されます。入場料500円。