馬場駿吉さん90歳 熱き芸術家魂
連作俳句とダンス競演
4月8日 『耀変』加藤おりはさんと
中学3年で句作を始めて75年、現代俳句のトップランナーであり続ける俳人で、舞台芸術・美術評論の馬場駿吉さん(90)が2023年4月1日、名古屋・伏見の「ぎゃらり壺中天」で開かれた月例茶話会「阿弥(あみ)の会」第9講に登場しました。「現代俳句のありよう」と題して、耳鼻咽喉科の専門医の傍ら、常に俳句を詠み、時代の先鋭的な美術、舞踊、音楽など異ジャンルの芸術表現と関わってきた複眼的な人生を振り返りました。
馬場さんは、1962年に出した第一句集「断面」の装丁を手掛けてもらっ
た銅版画家駒井哲郎の作品について「こんな小さな作品に、大きな宇宙が閉じ込めている。俳句と同じだ」と感動したことに触れて、先鋭的な現代美術、暗黒舞踏、短詩系文学にのめり込んでいった自らの軌跡を紹介。近年は、俳句の世界では過去の遺物視されていた「連句」に注目し、「身体表現との相性がいい」として、独吟の連句を武器に、異ジャンルとの協働について言葉静かに、しかし熱い芸術家魂がこもる言葉で語りました。
「羅衣を火となして祝舞のサパティアド」。馬場さんが、スペイン舞踊家加藤おりはさんのダンスを初めて見た時の情景を詠んだ句です。この俳句の献呈を受けて、加藤さんはお礼のため馬場さんを訪問。意気投合して共演の話が進み、4月8日、名古屋市内で公演『耀変 リズムに焼成される身体』を開くことになりました。
馬場さんは「一瞬にかける加藤さんのエネルギーの大きさは、俳句に通じるものがある」「フラメンコとコンテンポラリーダンスを結び、新しいスタイルを生み出している」などと、加藤さんを評価しました。昨年12月以来、多忙な中を縫って「できるだけリハーサルに立ち会って、現場で踊りを見に染み込ませて俳句を詠んできた」と語りました。
加藤さんは「先生とは芸術の深いところでつながって、私のからだの中で先生(という存在)が一部になっている」と応じて、初共演に賭ける熱い思いを語りました。
リハーサルでは、馬場さんが最初の発句と最後の挙句を詠んで、作品の流れの大枠を決めた後、加藤さんが場面ごとに踊りを振り付け、試演して、馬場さんは俳句を推敲したり、作句したり、次第に深化してゆきました。これまでクロスすることがなかった舞踊家と俳人が、互いの芸術をさらけ出して現場で触発しあって共振。文字通り「リズムに焼成される身体」を紡ぎました。
加藤さんは「馬場先生は身体はいのちの器で、いのちの波を体現しておろす技が踊りだとおっしゃいます。極限まで言葉を切り詰め、無限に広がる世界を表現する俳句。その世界に出会ったときに、身体はどう反応するのでしょうか。俳句は、踊りの熱に触れたときには‥。窯の炎によって釉薬と陶土に思わぬ変化が生じるように、音と言葉のリズムに焼成される身体、短詩系文学はどう『耀変』するのでしょう。いのちのありようを表現できたらと思います」とメッセージを寄せました。
◇ ◇
愛知県芸術文化選奨文化賞・名古屋市民芸術祭舞踊部門特別賞受賞記念
加藤おりはスペイン舞踊公演『耀変 リズムに焼成される身体』
日時 2023年4月8日(土)Aプログラム「スタジオカルダモモ公演」 17:00開演
Bプログラム『耀変 リズムに焼成される身体』19:00開演
会場 名古屋市東区葵1の3の27、名古屋市芸術創造センター。
残席わずか。前売り 4000円 当日 4500円
問い合わせ スタジオカルダモモ 電話052(932)5222
メール cardamomo555@gmail.com