一器・一花・一菓
袖隠 極大輪の白椿
初咲きでお客迎える喜び
椿最大の花容を誇る袖隠(そでかくし)が一輪、拾穂園の庭に咲きました。お彼岸の中日にあった拙宅茶会で、竹の置筒花入に投げ入れました。極大輪の袖隠を向かって左手に掲げるように、中央にはさりげなく仏の座を添え、右手には馬酔木(あせび)の花房を垂らして、3種で流水を表現してみました。
袖隠は、江戸時代は城内に咲く門外不出の椿。あまりにも美しいので、武士が袖に隠して持ち出したという言い伝えがあります。膨らんだ蕾は鶏卵ほどもあり、極大輪の白花を咲かせます。
拾穂園の一木は遅咲きで、花芽がようやく兆すほどですが、一輪のみ一カ月前から蕾を付け、茶会を待っていたかのように大きく膨らみました。待ちに待った初咲きでお客を迎えるのは、何よりの喜びです。
竹花入の銘は「春園」。江戸後期、茶の湯をもって尾張徳川家に仕えた茶堂(数寄屋頭)7代平尾数也、自軽叟(じけいそう)の作です。選び抜いた竹材による造形は気が漲っているようで、尾張名古屋に伝承された武家茶、有楽流の美意識が宿っています。
昨年春、青磁の最高峰とされる砧青磁の浮牡丹花入に袖隠をいけて、大勢のお客をもてなす機会がありました。
袖隠は、真の花器にも、草の花入にも、映る花姿です。