拾穂日乗〜初咲きの椿「微笑」〜以心伝心の笑み
四国の旧家の奥庭にひっそり咲き、門外不出だった珍種の椿が
拾穂園に到来して5年。鉢植えだった苗を庭の一角に定植して2年目にして
初めて花をつけました。
長逝した友人から贈られものです。
「椿の銘は?」「さあ、分からんな。咲いてのお楽しみだね」
先日、やっと膨らんだ蕾を見て、いつ咲く、と心待ちにしていました。
雨あがりの朝、恥ずかしいような可憐な笑みを浮かべていました。
さっそく、図鑑で調べると、微笑と分かりました。
仏教の以心伝心を表す「拈華微笑(ねんげみしょう)」から取られた銘です。
一重咲きのワビスケ系の椿で、薄桃色地に白や濃い紅のぼかしが入ります。
原木は、愛媛県四国中央市の旧家(現・正覚寺)奥庭にあった推定樹齢250年の大椿。
戦後まで門外不出とされ世に知られることはなかったようですが、
原木が枯死する前に、多くの枝が持ち出され、好事家の
間に流布したそうです。
まわりまわって、到来した不思議なえにしを思います
名椿を見つけると、挿し木して育てていた友人。
椿をこよなく愛した友の懐かしい笑顔に出会ったようで、心が温まりました。