味わう

味わう

一器・一花・一菓
月下の露地行燈
足もとも、陰翳の美も照らす

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 翳り、くもり、くらがり、、、濃淡ある暗さにこそ日本の伝統美があると、作家の谷崎潤一郎は長編随筆『陰翳礼讃』で述べました。

 「美と云ふものは常に生活の実際から発達するもので、暗い部屋に住むことを余儀なくされたわれわれの先祖は、いつしか陰翳のうちに美を発見し、やがては美の目的に添ふやうに陰翳を利用するに至った。...」

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 夜でも明るい現代の暮らし。可能な限り部屋の隅々まで明るくします。

 一方、茶の湯では陰翳の美を大切にします。茶の環境を「市中の山居」といわれるような非日常の世界ににするため、茶室に至る苑路の途中には外露地、内露地の結界が設けられ、飛石や延段によって躙(にじり)口へ導かれます。樹間には石灯籠が低く据えられ、茶室の近くには、手や口をすすぐ蹲踞(つくばい)が据えられます。

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 中秋の名月の宵、露地に行燈を灯してみました。足もとを照らす和蝋燭の明かりは、日本古来の美も照らしているようです。茶室に入ると、脇床の据えられた蝋燭立てに灯火が揺らぎます。

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