一分閑話26〜服部清人〜うっかりの効用は
森のリスたちは秋の間に木の実をせっせと集めて土中に埋める。冬の食料不足に備えるためだ。
ところが、奴らは記憶力に問題があって、どこに埋めたかを忘れてしまうんだな。
結局、掘り返されることなく放置された木の実から芽が出て、それが育ち何百年の時を経て森になるのだという。
もし記憶のよいリスばかりだったら、埋めた木の実の場所を全部覚えていて木は育たなかっただろう。
この話を聞いていたうっかり者のYさんが、
「そうかア、俺も意識せずに役に立っていることが実はあるのかもね」
と言って颯爽と帰っていったと思ったら、やっぱりスマホを忘れていった。やれやれ。
ぎゃらり壺中天主人
©️YOKOI Kazuo