味わう

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名古屋二期会が50周年記念公演『魔笛』
多彩な歌声、傑作オペラを上質に
困難克服し歌、管弦楽、舞踊が躍動

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 約20人にも及ぶソリストが個々の持ち味を発揮。モーツァルトの傑作歌劇の多様な魅力的な音楽を伝える上質な上演でした。中京地区のオペラ上演の中心団体、名古屋二期会が創立50周年記念公演『魔笛』を2021年10月23日、24日名古屋・金山の日本特殊陶業市民会館フォレストホールで開きました。コロナ禍で昨年秋に上演される予定が1年延期、繰り返し襲った感染拡大の波に揉まれて、苦労が付きまとい難産の末の上演でしたが、そんな困難を感じさせないステージでした。

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 魔笛は魔法の笛を巡る愛と冒険のファンタジーです。主人公の王子タミーノが夜の女王の娘パミーナとともに、いくつかの試練を克服して、高僧ザラストロのイシス・オシリスの宗教に入会するまでの過程をたどります。伊藤明子の演出は、かなり支離滅裂な物語をメルヘン調に軽ろやかに展開させつつ、18世紀フリーメイソンの古代密儀の厳粛なイメージを巧みに融合させ、魔笛が内包する啓蒙思想、人間の英知と愛による理想世界に光を当てるものでした。

 WEB茶美会編集部が拝見したの2日目、24日。ダブルキャストの24日組は、アンサンブル重視の歌唱でした。突出した歌手はいませんが、適材適所の布陣です。
 ザラストロの伊藤貴之は丁寧な歌いぶり。最低音で歌うアリア「この聖なる殿堂では」では、深いビロードのような艶こそ欠けるものの、難所をそつなくクリア。聴かせました。タミーノの上ノ坊航也、パミーナの天野久美(小原美並が体調不良で降板し、天野が初日に引き続いて出演)は、歌うほどに次第に硬さが取れて、第2幕では本領を発揮。のびのびとした歌声で聴衆を魅了しました。パパゲーノの野々山敬之、パパゲーナの愛知智絵は役柄を掴んだ演技と歌いぶり。「パ・パ・パ」といった口ずさみたくなる愉快な二重唱歌で喝采を浴びました。
 夜の女王の田中喜子は、コロラトゥーラ・ソプラノの超絶技巧、超高音アリアとして知られている「地獄の復讐が私の心の中に煮えかえっている」など2曲のハードル越えを、少しハラハラさせながらも、最後は見事にクリア。役目を果たしました。
 3人の侍女たち(三輪栄、鈴木裕子、梅澤市樹)の掛け合いとハーモニーの妙、童子3人(村松由理、中根明日香、田中祐衣)の透明感のある甘やかなハーモニー。聴きどころ多いこのオペラを、歌手たちがしっかり歌い込んで、本番に臨んだことが伝わってきました。

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 村上寿昭指揮の名古屋二期会オペラ管弦楽団は、崇高で楽しい音楽を紡ぎ出しました。ただ、歌声を優先させて演奏音量を絞ったためでしょうか、ダイナミクスが欠けたのが、惜しまれます。
 三代真史の振付は、夜の世界の魑魅魍魎感、魔法の笛と鈴が紡ぐメルヘンの世界をダンスで表現。怪物たち、魔法の笛によって出てくる動物たち、試練の場の火の精霊、水の精霊を、形態模写を織り込んだ振り付けで見事に舞踊化しました。息のあったダンスを披露した三代舞踊団のダンサーたち、赤ちゃんパパゲーノ・パパゲーナを演じた微笑ましい幼児たちが、オペラに精彩を添えました。