知る・学ぶ

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古流の教え⑦
有楽流茶道の点法「中置」
最初縮め、両翼に展開 お客を退屈させず
鳳に乗った気分

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茶器をはじめはギュッと詰めて飾り置き、点前が進むに次第に大きく展開し、点前座中央に置いた風炉・釜を中心に翼を広げたように茶器が配置されます。四百数十年の歴史を有する大名・武家茶道、有楽流の「中置(なかおき)」は、独創的な「もてなしの侘び茶」を追求した流祖織田有楽斎らしく、お客を点前中も退屈させない、見て楽しめる視覚的要素が盛り込まれています。

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中置は、5月から始まった風炉の季節の終盤に行われる「秋の点前」です。茶道では「名残」と呼ぶ、風炉終盤の肌寒さを感じるようになった時期、風炉を織部焼などの敷瓦に載せて、水指を常とは逆に勝手付に寄せて点前をします。これはお客に少しでもあったまってもらおうと火を近く、水を遠くという配慮から生まれたものです。

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各流派とも風炉・釜、水指の位置はほぼ同じですが、茶入、棗、茶碗、蓋置の配置には流派によって差異が生じます。有楽流はとりわけ独自色が強いように思います。

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薄茶だと、棗、茶碗を持ち出して勝手付に寄せた水指を起点に、逆「く」の字を書くように、ぎゅっと詰めて置き合わせます。次いで、建水を持ち出し、蓋置、柄杓を定座に置き、棗や茶杓を清めた後の展開がユニークです。

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あたかも、釜を中心に左右に翼を広げたように、道具畳の右側には棗、茶筅が配置され、左側には水指が翼のよう。茶器の配置が大きく伸縮するのです。
それだけでなく、この点前をすると、あたかも翼を広げた鳳に乗っているような気持ちになるのは、私だけでしょうか。この日用いた鉄風炉には、鳳凰文が陽刻されているから、いっそう、そんな気分が盛り上がるのかもしれません。

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当流の中置の点前は、もう一つのバージョンがあります。「大板」と呼ぶ大きめの敷板に、風炉・釜を載せ、蓋置・柄杓は敷板の上に横置きします。こちらは、また稿を改めて述べたいと思います。