知る・学ぶ

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一器・一花・一菓
〜名残の花を旅枕花入に〜
返り咲きは禁花なれど

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普段は禁じ手の「返り咲き」がこの時季に限って、茶席に侘びた風情を添えます。茶の湯では10月は、5月から始まった風炉の最終シーズン。「名残(なごり)」です。やつれた美を愛でる名残の茶では、割れたり欠けたりした茶碗を繕ってあるものを賞玩したり。季節を先取りした花が好まれる茶花でも、葉が虫食いになったような花や、時期外れに咲く返り咲きがやつれの風情を増すものとして、好まれます。

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先日、拾穂園であった稽古では、信楽焼の旅枕の花入に、夏の名残りの酔芙蓉の花、蔓もののテッセンの返り咲きと、秋の七種の一つ、藤袴を投げ入れてみました。

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この酔芙蓉は所有者によってすっかり伐採されて株だけになってしまい、もう枯れてしまうのかと思ったら、すごい生命力。株から枝葉がぐんぐん伸びて、例年より遅い開花でしたが、10月になると花をいっぱい付けて、驚きの蘇りです。

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蕾の時は濃いピンクで、朝に純白の花を咲かせます。お酒を飲んだように、お昼には優しいピンク色に染まり、夕方には濃いピンクになるという、一日中鑑賞して飽きない花です。

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テッセンは初夏に咲いた花が枯れ果てた後、時季外れで数輪が返り咲き。葉脈だけ残した花の名残りもやつれの時季にふさわしく、信楽焼特有の火色やビードロ釉の肌や床の土壁に映ります。