老舗料亭・松楓閣が4月閉館
茶会・日舞 晴れの場失う
名古屋・覚王山のシンボル
初釜や舞踊会など茶道、日本舞踊の各流派、社中の晴れの場として親しまれている名古屋市千種区の老舗料亭「 松楓閣(しょうふうかく)」が2022年4月末で閉館することになりました。コロナ禍によって茶会、舞踊会、宴会、結婚式披露宴、法要などが激減したため、閉館を決めました。名古屋では近年、茶会ができる料亭が次々姿を消しています。本舞台のある格調高い大宴会場も希少で、閉館が惜しまれます。
松楓閣は釈迦の遺骨・仏舎利を安置する覚王山日泰寺の門前近くにあり、名古屋屈指の料亭の一つで、高級住宅地のシンボル的な建築です。大正の終わりから昭和にかけてこのあたりは緑豊かな丘陵地で財界人の別宅には好適地でした。松楓閣の前身も財界人の別邸と言われております。
その後、覚王山日泰寺参拝客のための宿坊「泉竹(いずたけ)」として生まれ変わり、さらに1947年に旅館となり、別館の増築などを経て現在の「料亭松楓閣」になりました。建物のうち、本館と離れが2006年に国の登録有形文化財に指定されています。
木造二階建ての本館は1934年の建築で4つの破風を見せる豪勢な正面の構えが特徴的です。1階は12~20畳の部屋と30畳の中広間7室からなります。
堂々たる濡れ鷺型灯篭や阿古陀型の手水鉢など置かれた庭に面した部屋では、茶会が催されました。大理石の壁が印象的な玄関ロビーは立礼席にもなり、茶味があります。
2階には、老松を描いた松葉目がある本舞台をもつ折上げ挌(ごう)天井の90畳大広間があります。格調高い大広間で食事を楽しみつつ、舞台が楽しめる大宴会場は、文化財の名にふさわしい名建築です。
この2年、経営は厳しく「新型コロナウイルスの感染拡大で、売り上げは三分の一になりました。歴史ある料亭を守りたかったが、事業継続が困難になった」と言います。建物は解体され、土地は三菱地所レジデンス(東京)に譲渡。跡地にマンションの建築が検討されています。