万葉抄
君に贈らむ吾木香
秋草の寂しさの極みを
吾木香(われもこう) すすきかるかや 秋くさの さびしききはみ 君におくらむ
若山牧水/歌集『別離』より
旅を愛した明治の歌人牧水が若き日、恋人に贈ったとされる短歌です。
「吾亦紅、ススキ(薄)、そしてカルカヤ(刈萱)。秋草の寂しさの極みを、あなたに贈ろう」...。
いずれも秋の風景に溶け込んでしまいそうなほど地味ですが。日本の秋には欠かせないものです。
先週、手紙を整理していたら、封書からひらりと落ち出た一句。さまざまなことが思い出され、切なくなりました。
静けさや すすきに抱かれ 吾亦紅
文・写真 内藤 啓