万葉抄
「芒」と「薄」
仲秋の名月に違いを知る
今年の中秋の名月は、9月21日。
秋のお月見には欠かせないススキ。
漢字で表記すると、「芒」と「薄」。
これまで、その違いについて考えてみたこともなく使っていました。
「芒」は、「光芒 こうぼう」「芒洋 ぼうよう」のように用いる漢字。「光芒」とは、強い光が伸びていくその先を表すことばで、彗星の尾のようなイメージです。「芒洋」の方は、はっきりとしないようす。つまり、「芒」とは、長く伸びたその先が、もわもわっとまわりに溶け込んでいるような状態を表す漢字で、ススキのイメージにぴったりと重なります。
一方の「薄」の方は、もちろん「うすい」と訓読みして使います。ただ、草かんむりが付いているように、本来は「草むら」を指す漢字だったらしく、「すすき」と訓読みして使うのは、そこから生じた日本語独自の用法のようです。
どちらを使ってもいいわけですが、「芒」は1本1本のススキの姿に重点があり、「薄」は群がって生えているススキを思い出させる、という違いがあるでしょうか。
「難読漢字図鑑 植物編」のおかげで、芒と薄の違いがわかり、ちょっと嬉しくなりました。
花は、芒 に萩と 白式部を添えました。
文・写真 内藤 啓