万葉抄
月も雲間のなきは‥
花で描く侘び茶の心
「月も雲間のなきは嫌にて候」
「侘び茶」の創始者とされる茶人、村田珠光の有名な言葉です。
これは有名な『徒然草』にある「花はさかりに、月は隈(くま)なきをのみ、見るものかは」という、不完全・不足をかえってよしとする思想を背景にしたものです。歌人の吉田兼好は、不完全の美や心の眼で見る美しさをたたえました。
利休様の師の武野紹鴎も、侘び茶の目標として「連歌は枯れかじけて寒かれと云ふ。茶の湯の果てもその如く成りたき」という言葉を残したと伝えられています。
私なりに試行錯誤し、花で、「月も雲間のなきは嫌にて候」の世界を表現してみました。
「不足も不足」は、重々承知しておりますが、修行中の身なれば、お許しくださいませ。
今年2021年の中秋の名月は、9月21日です。
文・写真 内藤 啓